間接費改革とは?競争を生き抜くために日本企業が待ったなしで取り組むべき3つの理由

Norimasa Funamoto |

企業活動のグローバル化、ボータレス化が当たり前となり、大企業だけでなく中堅・中小企業までもが国際的な競合にさらされています。しかし、海外企業との競争においては、日本企業はその労働時間に見合った戦績が残せていない場面も多くあります。これはいったい何故なのでしょう?本記事では、その打ち手として間接業務プロセスのデジタル化に着目しました。日本企業が生き残るため、間接費改革に取り組むべき理由を3つのポイントでご紹介します。

間接費改革とは?

間接費改革とは、従業員経費、ベンダー経費、出張費といった短期的な改善が可能、かつ、多くの従業員が関わる領域をデジタル化し、最適化することで企業の競争力を向上させるアプローチです。

長年にわたり、日本企業は直接費、特に現場部門に関しては大きな効率化を進めてきました。これは今や“KAIZEN“文化と言われ、海外でも認識されていますよね。そのため、この分野においてある程度の最適化がなされており、コストを削減できる部分は少なくなっています。一方で、間接費は長く見過ごされ、効率化や最適化が進んでいない古いプロセスが残されている分野です。そのなかでも、人件費や償却費は短期的な改善が難しい部分ですが、従業員経費、ベンダー経費、出張費は、短期的な改善が可能です。テクノロジーの進化や規制緩和の恩恵を受けて、この分野をデジタルによって変革していく、そんなアプローチが間接費改革です。

取り組むべき理由1:生産性が向上する!

日本生産性本部が2019年に発表した労働生産性の国際比較によると、2018年の日本の生産性は46.8ドル(4,744円/購買力平価(PPP)換算)でOECD加盟36カ国中21位という結果になっています。これは米国(74.7ドル/7,571円)の6割強の水準に相当します。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続います。

ちなみに、労働生産性が低い業務と聞いたとき、みなさん何を思い浮かべますか?コンカー調べによると、月末の恒例行事の経費精算に日本のサラリーマンは生涯52日、のり付けに12日間も費やしているそうです。

では、間接費改革によってこの経費精算業務のプロセスはどのように変化するのでしょうか。例えば、国内出張で発生する新幹線代、ホテル代、近隣交通費代の経費精算。従来の方法では、必要な項目をシステムやエクセルに手入力し(場合によっては手書きなんてことも!)、領収書を紙の申請書に糊付けして提出されていると思います。この業務をデジタル化すると、旅行予約システム、コーポレートカード、ICカードと連係する事が可能になり、経費情報は自動でシステムにインプットされます。さらに、領収書をスマートフォンで撮影することが可能となり、紙での回覧も不要になります。

間接費改革によって、今まで着手していない間接業務のプロセスを変えていくことで、大きな業務効率化が期待でき、企業の生産性向上を実現することが可能となるのです。

参考:公益法人日本生産性本部 労働生産性の国際比較2019(https://www.jpc-net.jp/research/list/comparison.html

取り組むべき理由2:ガバナンスが強化される!

近年、企業はリスク管理とコンプライアンスという、成長や長期目標の達成を阻みかねない問題に直面しています。実際に、コンカーが過去に実施した調査では「経費の不正利用をした経験がある人は24%」という調査結果が出ています。(2016年3月「サラリーマンの経費精算に関する実施調査」)

これほど多くの人が不正利用した経験があるということは驚きですが、これに加えて意図せず行われている不正が存在することを考慮すると、数字はもっと大きくなるのではないかと思われます。これらの一件一件の金額は大きい額ではなかったとしても、ひとたび不正が発覚すれば、今まで長年築きあげてきた社会や顧客からの信頼は一瞬で崩壊します。特に従業員経費は部署を問わず多くの従業員が関与する業務。企業の信頼を損なう大きなリスクが潜在していると言えます。

間接業務をデジタル化することによって、これらの不正を検知・予防し、リスク回避及びガバナンス強化を実現することが可能です。例えば、通勤定期区間の二重申請や申請における上限金額の超過といった規定違反が自動で検知されるようになるのです。また、人がデータを手入力する際にはどうしても改ざんの余地が残ってしまうものですが、コーポレートカードやICカードと連携することによって、編集できない状態でデータがインプットされ、意図しない不正さえ無くすことが可能になります。このように、間接費改革を行うことにより、全社レベルでのガバナンス強化をもたらすことが可能です。

取り組むべき理由3:働き方改革が加速する!

2018年働き方改革関連法案が成立しました。日本人は昔から働きすぎ…なんて言われてきましたが、この法案をきっかけとして長時間労働の是正や多様な働き方の実現が期待されています。しかし、これを実現するための障害として挙げられているのが、日本に根強く残るの紙や押印が関与する業務プロセスです。

日頃、オフィスワーカーが関わる間接業務には多くの紙書類が存在しますが、請求書や経費精算書はその代表例ではないでしょうか?紙で押印してもらうために上司が席に座っているかどうかをチェックする、わざわざ判子を押すためや、請求書を受け取るために出社する、そんな経験が皆様にもあるのではないでしょうか?

経費精算がスマートフォンからできるようになったら、申請者も承認者もオフィスに戻る必要はなくなりますよね。紙の請求書が電子請求書になったら、わざわざオフィスで受け取る必要もありません。間接業務のデジタル化によって、従業員の働き方を時間や場所から解放することが可能です。これにより、長時間労働の是正や、多様な働き方の実現を推進することができます。加えて、間接業務は多くの従業員が関わる分野。企業にとって、間接費改革は働き方改革を全社的に推し進める強く頼もしい追い風となることでしょう。

まとめ:間接費改革は人的リソースの適切な再配分や従業員の本業への注力を実現する

間接業務のプロセスをデジタルによって効率化・最適化するー 生産性の向上、ガバナンス向上、働き方改革推進という観点から、間接費改革に取り組むべき理由を紹介してまいりました。これらを実現することで、企業は人的リソースの適切な再配分や従業員の本業への注力といった次なる施策を打つことが可能になり、自社の競争力を伸ばしていくことができます。

これを読んでくださった皆様。待ったなし!で、間接費改革を始めてみませんか?

SAP Concur で間接費改革に取り組んだお客様の事例を参考に、ぜひ貴社でもご検討ください。

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日本企業の間接費管理の問題点を日本CFO協会との共同調査結果から明らかにしつつ、様々な視点から改善策を考察