導入事例
サポート対応の改善にSAP Concurを導入【お客様事例】旭化成株式会社
SAP Concurの導入による課題解決と効果について、お客様の体験談を聞くインタビューシリーズ。今回は、Concur ExpenseとConcur Invoiceを導入し、SAP Concurソリューションに関するユーザーからの問い合わせ対応を専門のサポートデスクが行うUser Support Desk(ユーザーサポートデスク、以下USD)と、SAP Concurの分析ツールであるIntelligenceを使ったデータ活用をトータルで支援するデータ分析コンサルティングサービスのReporting Services(レポーティングサービス、以下RS)を活用されている旭化成株式会社のデジタル共創本部 IT統括部 業務推進グループ 課長 上野あゆみ様にお話を伺います。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、サポート対応を改善するためUser Support Deskを導入
コンカー:簡単に貴社のご紹介と、上野様のご担当領域について教えてください。
上野様:旭化成グループは、総合化学メーカーとして七つの事業会社を中核に据え、マテリアル、住宅、ヘルスケアの三つの分野で事業を展開しています。2022年に100周年を迎え更なる成長を目指しています。私は、IT統括部でシステム部門のリーダーを務めており、SAP Concurの担当もしております。
旭化成グループでは、2021年4月にConcur Expenseを導入し、2023年4月からConcur Invoiceの利用を開始しています。グループ会社は大小合わせて57社あり、約3万人弱の従業員が利用しています。
(旭化成の上野あゆみ様)
コンカー:ではまず、USD導入の経緯をお聞かせください。
上野様:弊社では通常、システムを導入する際に、従業員への説明会の開催や問い合わせ対応の準備を行います。2021年4月のConcur Expense導入時は、新型コロナウイルス感染症の流行により対面での説明会開催が難しかったため、基本操作のユーザーサポート部分についてはUSDを使うことに決めました。
それまで、経理や人事などのシステムに関する問い合わせは、それぞれの部署が直接電話やメールで対応していました。社内システムは問い合わせを最小限に抑えるよう独自に開発していますが、それでも全社のヘルプデスクに月間約5,000件の問い合わせが入っていました。新しいシステム導入時にはその数が約1割から2割増加する傾向にあったため、SAP Concur導入時にも多くて1,000件ほどの問い合わせがあるだろうと予測していました。
コンカー:SAP Concurの導入には、自社独自の運用から世の中のスタンダードに近づける標準化がされたと思います。そのなかでUSDを導入したメリットはどのようにお考えですか?
上野様:以前、弊社のヘルプデスクの再構築を行った際には、多くの人員が必要であることなどさまざまな課題に直面しました。特に、システム特有のサポート体制を用意するとコストが高額になりがちです。USDはこのような人材面・コスト面でも非常にメリットがあると思います。さらに、弊社特有の事情についても事前に連携しておけば適切な回答をいただける点も助かっています。
コンカー:USDでは、FAQやマニュアルなどの資料を事前に提供いただき、それらを現場オペレーターが確認・検索することで一次回答できるようにしています。この点について工夫されていることはありますか?
上野様:USDの担当者が回答できなかった問い合わせは弊社へ連携されますので、その内容を元にして、FAQの最新化や連携は常に行っています。月1回の更新を心掛けており、新しい制度の導入や社内ルールの変更、さらには税法などの法律変更のタイミングでも情報の更新を行っています。この更新プロセスには、報告書の参照、ユーザーからの問い合わせ傾向の分析、報告書と一緒にいただくご意見などを参考にしています。
FAQの更新作業は、私と社内の問い合わせ担当者が行っています。必要なものを取捨選択してFAQを更新することに加え、必要に応じてシステム設定変更なども行い、新たな問い合わせが生まれないようにしています。SAP Concurの設定については、コンカーの担当者に相談することもあります。監査メッセージの内容が他社と比較してわかりにくくないかなど、弊社独特の運用方法や設定に関する意見をいただくことは非常にありがたいです。
User Support Deskを活用し、教育コストの削減と業務効率化を実現
コンカー:USDを利用して良かったと思われることはどんなことでしょうか?
上野様:一番はUSDがコンカーによる運営だということです。自社で従業員のサポートをする場合、SAP Concurのサービス自体に変更があるとその都度オペレーターの教育が必要ですが、USDならそれは不要となります。他社の利用状況など世の中のトレンドも知ることができるのも非常にありがたいです。
BPOサービスという性質上、他の会社と繁忙期が重なる懸念もありますが、その点を除けば、いつでも相談できる担当者がいる安心感や、問題があっても解決に向けた展望が見えることは魅力です。USDの拠点は青森にありますが、距離を感じることなく利用できます。2022年6月頃に青森のセンターを訪問する機会があったのですが、責任者の方とお会いしてUSD側の困りごとなどを確認できたので、その後のコミュニケーションや対応もやりやすくなりました。
コストに関しては、提供されるサービスの質を考えると非常に満足しています。特に教育コストが抑えられる点は助かっています。SaaSシステムの場合、度々変更が発生するため、自社で細かな情報収集はほぼ不可能です。オペレーターへの教育や資料の準備が必要になり、小さな変更であっても1人月程度はかかると考えられます。SAP Concurに毎月変更があると想定した場合、年間で1人月×12か月の工数が必要です。USDには、それにかかる約1,000万円程度の削減効果があると見込めるでしょう。
SAP Concur稼働から一年。蓄積したデータを活用するためReporting Servicesを導入
コンカー:続きまして、RS(レポーティングサービス)についてお聞きします。経費データ分析において特に注目した点や抱えていた課題をお聞かせください。
上野様:まずは「経費利用の全体感を把握すること」です。経費を正しく使えているか、正しく精算できているかの確認をすることを目的としていました。次に「不正検知」です。経費精算システムの更新に対応して、不正検知のやり方も検討をする必要がありました。最後に「KPIのモニタリング」です。システム導入の効果を可視化するために、KPIの達成状況をデータで分析したいというニーズがありました。以上3点のデータ分析を行い、SAP Concurの導入効果検証や、生産性を高める施策の立案と実行を目指しました。
経営者層からもレポートの要望があったため、導入から1年経ってデータが溜まってきた段階でRSの利用を開始しました。
コンカー:どのようなKPIを設定されているのでしょうか?
上野様:1つ目はキャッシュレスで支払い可能な経費タイプの「キャッシュレス比率」です。対象となるのは出張や飲食に関する経費で、明確に定めています。グループ各社によって事情が異なるものの、効率化の促進や、個人のクレジットカードを使ってポイントを貯めたいといった使い方の抑制を目指し、キャッシュレス比率の目標値を90%に設定しています。キャッシュレス比率は、月別、経費タイプ、会社、支払方法など複数の切り口で可視化しています。
コンカー:不正検知の目的についても、RSは役立っていますか?
上野様: 不正を抑止する面でも役に立つと思います。例えば、以前は物理的に領収書を提出していましたが、Concur Expenseの導入で写真でのアップロードが可能となり、重複精算のリスクが生じました。これに対応するため、同じ日に同じ金額で同じ目的の精算がないか毎月分析レポートでチェックし、重複が見つかった場合は訂正しています。また、接待や出張中の飲食費において、同席者が正しく申告されているかをチェックするレポートもRSで作成してもらいました。こういった「見ることができる」という点を社内に周知できることが、不正抑止につながると感じています。
コンカー:なるほど。単純に分析レポートを出して計測するだけではない目的でもRSをご活用いただいているのですね。そのほかにRSを役立てている場面はありますか?
上野様:法人カードを使用しながら精算を忘れてしまったということがあるため、その一覧を作成し追跡できるようにしたり、カードで支払ったのに現金で支払ったとして経費精算してしまったというケースを把握したりもしています。また、弊社が旅行会社に一括で支払うシステムでは、各部門への正確な費用割り当てが必要ですが、経費精算が遅延すると計上部門が確定しないため、会計処理に影響が出ます。これは経費精算が行われていなくても社員本人としては影響がないため、遅延の発生につながりやすく苦労しているポイントです。
加えて、最近はコスト削減に焦点を当て、社内交際費の使用状況を注意深く監視しています。過度な使用を抑制するために内部でのみ共有する交際費の多い人のランキングを作成しています。
経営者はこのような分析レポートから定期的に報告を受けて経営判断に役立てていて、全体的なコスト管理の改善につながっています。旅費や経費、社外での交際費などの用途をより詳細に分析できるようになり、データが集まることの利点を活かして、今後さらに多様な分析や管理が可能になると期待されています。
コンカー:RSをさまざまな場面で役立てていただいているようで嬉しく思います!RSを利用してよかったことがあれば教えていただけますか。
上野様:Intelligenceは自身で分析レポートを作ることもできますが、自社で内製化するにはほかの業務を調整して作成時間を設けなければならず、かつ知見も不足しているため、時間を要してしまいスピード感に欠けてしまいます。RSに依頼すれば、非常に迅速に対応いただけるため、助かっています。
また、分析レポートは目的に応じてカスタマイズする必要がありますが、コンカーの担当者は、これまでの分析レポートの知見に加え、我が社の事情やこれまでの経緯も知っていますので、細かな要望でもそれにあわせた分析レポートを素早く作成してくれます。非常に心強いですね。
コンカー:RSにさらに期待していることはありますか?
上野様:日本独自のサービスに関する利用データなど、一部データの取得が難しいことがあります。こういったデータを取得できるようにしていただきたいですね。製品仕様についてはSAP Concur本社の方針に依存する部分が大きいので、日本固有の事情を相談できるような場も欲しいなと思います。旭化成の米国メンバーが、SAP Concurが主催するイベント「Concur Fusion」に参加させていただきますので、要望を連携し伝えてもらおうと考えています。
コンカー:日本市場は大きいため独自の機能が多いのですが、分析サービスについては発展途上というところです。ご期待に添えるよう善処してまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
旭化成様は、ワークスタイルの変化が大きかったコロナ禍の時代に、SAP ConcurのBPOサービスであるUSDを活用することで、社員への説明会やサポート対応への業務を効率化して乗り切りました。また、RSを活用して、SAP Concurに蓄積されたデータさまざまな切り口から分析し、経費精算の是正、不正検知・対策に積極的に取り組まれています。
今回の事例は、SAP Concurの新規導入をご検討の方だけでなくすでに導入されている企業の皆様にとっても、BPOサービスの具体的な活用法の参考になるのではないでしょうか。
今回ご紹介したサービス等についてはSAP Concurまたは、担当者へお問い合わせください。
SAP ConcurのBPOサービス全般についてはこちら!
【旭化成様 企業情報】
旭化成グループは、「世界の人びとの “いのち” と “くらし” への貢献」をミッションとし、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域において、事業持株会社である旭化成株式会社と7つの事業会社を中核とした事業を展開しています。マテリアル領域では、繊維、化学品、エレクトロニクス関連素材を提供しており、住宅領域では都市型住宅の開発やリフォーム事業を進めています。また、ヘルスケア領域では新薬の創出や医療機器システムの開発を通じて、医療の進歩に貢献しています。
詳しくはウェブサイト(https://www.asahi-kasei.com/jp/)をご参照ください。