クラウドシステムとは?企業にもたらすメリット
クラウドという言葉が生まれてから現在に至るまで、驚くべきスピードであらゆるものがクラウドと結びつき、進化しています。今では情報システムの構築や移行にあたってはまずはクラウドでの検討をおこなうとするクラウドファーストという言葉が浸透するほどです。クラウドにはどのようなメリットがあるのか、クラウドの市場動向や、身近な業務での活用方法についてご紹介します。
クラウドの時代になった背景ともたらされたメリット
今やさまざまなものがクラウドと関係し、その存在がなくては多くの業種が立ちゆかなくなるほど、クラウドは重要なものとなっています。いったいなぜ、クラウドがこのように隆盛したのでしょうか。
進むクラウドシステムへの移行
クラウドが急速に普及する以前は、オンプレミス(自社運用型)が主流でした。通信網の容量や速度が十分でなかったことに加え、情報システムを「所有すること」に価値が高かった時代でもあり、自社内での運用が基本でした。しかし、2006年を境にクラウドが注目され始めます。「雲」を語源とするクラウドは、ネットワークを経由して接続できるさまざまなサービスのことを指します。世界中のIT企業がこぞってクラウドサービスの開発・提供をおこない、急速に普及が進むようになりました。
日本では、2011年の東日本大震災の際にデータ損失により事業継続に支障をきたした企業が存在したことから、BCPの観点によるクラウドの検討が加速しました。その後、2018年に政府が打ち出したクラウド・バイ・デフォルト原則もクラウドファーストの流れを後押ししました。これは、政府が情報システムの構築を行う際にはクラウドの活用を基本として設計するという方針を打ち出したものです。このように、日本国内においてもクラウドシステムが浸透しつつあります。
クラウドを導入するメリット
では、クラウドを活用することでどういったメリットがあるのでしょうか。
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コストの削減
機器やシステムを自前で調達することなく導入ができるクラウドはオンプレミスに比べ圧倒的に初期費用を抑えられます。クラウドの場合、ランニングコストとして継続的な費用は発生しますが、オンプレミスの場合でもシステムを維持、管理するための人件費や電気料金等はかかります。また、クラウドの場合は利用者数が増えるにしたがい、スケールメリットが効くことでランニングコストが逓減していくことも期待でき、トータルでみてもコストが割安になる傾向にあります。 - 場所が限定されない
クラウドの大きな特徴として、どこからでもアクセスでき、同じシステム・同じデータをオフィス以外でも使えるという点があります。クラウド上で動くシステムは、基本的にどの端末からでも同じように操作が可能です。場所が限定されないことにより、業務のスピードアップや在宅勤務やテレワークを可能にすることができます。 - 導入時のリードタイムを短縮
オンプレミスの場合、システムの企画や調達に時間を要するのに対し、クラウドの場合は既にあるシステムを導入できるため、運用開始までのリードタイムが大幅に短縮できます。 - システムの拡張性
オンプレミスは自社の要件にマッチした独自のシステムを構築時にオーダーメイドできる点は有利です。しかし、クラウドであれば、運用していくなかでの機能追加や環境変化などに柔軟かつ迅速な対応が可能です。こういった拡張性は、変化の早い時代において大きなメリットとなっています。 - 業務プロセスの最適化
先ほどの項目で述べたオンプレミスは自社の要件にマッチした独自のシステムを構築時にオーダーメイドできるという点ですが、自社の要件にこだわり過ぎると非効率な業務プロセスから抜け出せないことも多いです。クラウドではパッケージ化されているからこそ最適化されたプロセスを所有しており、自社のシステムをサービス側にあわすことで効率的な業務体系を構築することが可能といえます。 - 運用するうえでの自社負担
オンプレミスにおいて行っていた自社内でのインフラ維持管理を、クラウドでは大半をベンダー側に任せることができます。大きなトラブルが発生した際にも、復旧作業は自社のリソースを割く必要がありません。クラウド運用により自社の負担を大幅に減らすことができるのです。 - セキュリティの安定性
自社内での運用ではセキュリティにおける責任も自社で負わなければなりません。高度化するセキュリティ対策に自社で対応していくのは大きな負担となります。クラウドでは最先端かつ高度なセキュリティを実装している場合が多く、自社での運用より高い安全性を継続的に確保できます。 - BCP・DR
事業継続計画(BCP)と災害復旧(DR)は、今や企業にとって無視できない重要な問題です。大規模災害や事業所の使用が困難な状況においても、事業を継続できる備えをしておかなければなりません。クラウドベンダーの多くはBCPとDRを考慮したサービスを提供しているため、そういったサービスを選ぶことでBCPとDRの実施につながります。
拡大するクラウドビジネスの現状とこれから
世界的にクラウドファーストの流れは加速し、クラウドサービス市場も大きく成長しています。これからクラウドビジネスはどのように変化していくのでしょうか。
米調査会社のガートナーが2019年に公表した市場動向によると、世界のパブリッククラウドサービス市場は2018年に1,967億ドル、2019年には2,278億ドルと報告されています。さらに2020年には17%の成長を遂げ2,664億ドルに達し、2022年には3,546億ドルにまで成長すると予測しています。同レポートはこの予測の根拠として、従来のデータセンターでは対応困難なデータ処理量が求められることを挙げています。新たなアプリケーション開発はさらに高度化したクラウドサービス上で行われるため、市場の成長は止まらないという見方です。
また、これによりクラウドへの期待は高まり投資も進むとも予想しています。次世代のソリューションは大半がクラウドによって機能強化されたものであり、いかに強力なクラウドプラットフォームを持つかということがデジタルビジネスそのものの強みに直接影響するという考えです。クラウド戦略の構築と実装、そして成熟が、世界中のITチームにおける最優先事項であり続けるとの意見もあり、クラウドビジネスの成長は拡大を続ける見通しです。
日常で不可避の業務こそ大きい、クラウド化のメリット。
日本においてもクラウドシステムは徐々に浸透しつつあります。
平成30年版情報通信白書によると、クラウドを利用している企業は2017年時点で56.9%にのぼっています。クラウド利用企業のうち85%以上が効果ありと返答し、そのメリットについても実感していることがうかがえます。利用している内容としては、情報共有・財務会計・営業支援など、日常的に行われている業務が上位に挙げられており、すでに多くの職場でクラウドは身近なツールとして浸透していると言えます。
こうした日常業務のなかでも多くの人が経験のある経費精算について、株式会社コンカーでは調査を行いました。同調査では、日本のサラリーマンの76%が「経費精算は面倒」であると回答しています。特に領収書の糊付け作業に対しては72%が負担に感じているという結果が出ており、また、経費精算に関する作業のために重要な業務にかける時間が圧迫されていることが判明しました。
日常でありながらも不可避な経費精算のような業務こそ、クラウド化で大きいな解消が見込まれます。領収書を持ち帰り申請書に糊付けして提出という作業は、スマートフォンを使って出先で電子化し送信する作業で置き換えることができます。これにより、大幅に作業の負担は削減できるはずです。
同調査では、スマートフォンによる精算業務の効率化に期待する人は62%、経費精算を合理化した場合の期待効果は従来の作業時間に対し83%削減としています。このように避けられない日常の身近な作業こそ、クラウドのツールを利用することで大幅に効率化できます。
システムのクラウド化は今後も加速する
世界で加速するクラウド化の流れとクラウドビジネスの市場動向、身近な業務におけるクラウド活用についてご紹介しました。
クラウドを軸としてさまざまなものが運用される仕組みは今後も増え続け、クラウドファーストの流れはさらに加速すると思われます。さらに身近なものとなっていくクラウドですが、コスト面やセキュリティ面などの導入時におけるメリットだけではなく、場所が限定されない点や、最適化された業務プロセスを取り入れることができる点は日常業務を効率化することにもつながります。
クラウドを利用することで、柔軟性を持って変化に対応できる基盤を整えましょう。
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