コア・コンピタンスを見極める!経営最大の武器の探し方
コア・コンピタンスとは何か。「経営戦略において大事なことらしい……」と、言葉を聞いたことはあっても具体的な意味は曖昧な理解の経営者もいるかもしれません。今回は、このコア・コンピタンスの意味と、より強固な経営戦略のために活用していく方法を紹介します。
はっきりさせておきたい!コア・コンピタンスとは
コア・コンピタンスとは、直訳するとコアは核や中心部、コンピタンスは能力や技術といった意味であることから、これらを繋げた「核となる能力」となります。では、この言葉・考え方はどのようにして生まれたのでしょうか。
コア・コンピタンスという考え方
コア・コンピタンスとは、1994年に発刊された経営雑誌のなかで登場した、経営戦略論のひとつです。この「コア・コンピタンス経営」という考え方は、世界をリードする経営学者として有名な、ゲイリー・ハメルとC.K.プラハラードの両氏でよって提唱されました。
では、「経営の核となる能力」とはどのようなものでしょうか。両氏はそれを次のように定義しています。
コア・コンピタンスの3つの条件
- 顧客に利益をもたらす能力
自社の利益を追求するのはもちろんですが、顧客にとっても利益を感じられるものでなければなりません。 - 他社から模倣されにくい能力
他社が簡単に真似できるようであれば、その技術は自社の武器になり得ず、将来性もありません。 - 複数の商品や分野に応用できる能力
技術が1つの分野にしか使えないものだった場合、その技術の需要がなくなったときには武器を失ってしまいます。このようなことにならないよう、多分野に応用できる技術である必要があります。
どう使う?コア・コンピタンス
コア・コンピタンスについて、少し具体的な意味が見えてきたでしょうか? これらをまとめて、コア・コンピタンスを平易な日本語で表現した場合、次のようになります。
「お客さんにメリットがある、他社から真似されない自社だけの武器」
これがコア・コンピタンスなのです。このような武器があれば、経営戦略も立てやすく収益の増加と安定化も見込めるでしょう。
では、コア・コンピタンスを見つけるにはどうしたらいいのでしょうか。それを考える前に、有名企業におけるこれまでの事例を通じ、コア・コンピタンスとはどのようなものなのかをイメージしてみましょう。
- 本田技研工業のエンジン技術
自動車の排気ガス規制が進むなか、本田技研工業では独自の技術開発力により、低公害エンジンを開発しました。このようなエンジンに関する技術がコア・コンピタンスとなり、世界に先駆け排ガス基準値をいち早くクリアしたのです。 - ソニーの小型化技術
ソニーのウォークマンといえば、ポータブルプレイヤーの代名詞であるヒット商品です。ポケットに入れて持ち運べるプレイヤーを実現したのは、ソニーの小型化に対する情熱と、蓄積された技術です。 - 富士フイルムのナノテクノロジー
デジカメの登場によりフィルムカメラは主流の座から退き、同時に富士フイルムも売上が減少していました。しかし、フィルム製造の際に使う薬品についての知識と、極小の世界についての研究蓄積が富士フイルムにはありました。これをコア・コンピタンスとし、現在の医療とナノテクノロジー分野での活躍へと結びつけています。近年では、エボラウィルスに対抗するワクチンや、痛みのない注射針の開発などでも有名です。 - スターバックスコーヒーのブランドイメージ
スターバックスコーヒーのコア・コンピタンスは、そのブランドイメージにあるといえます。「スターバックスのコーヒーを飲んでいる」ことに対し、顧客がメリットを感じているのです。このように、確立されたブランドイメージも立派なコア・コンピタンスになります。
これらの技術は、いずれもコア・コンピタンスの条件に当てはまる、それぞれの企業における強み、武器ですよね。長年の研究や開発のなかで身につけたもの、見いだしたものです。では、これから新たにコア・コンピタンスを見つけようという企業はどうしたらいいのでしょうか。
自社に見合ったコア・コンピタンスを見極めるには
「自社のコア・コンピタンスは何か」を考えるときには、次のような4つのステップにより自社の武器を見極めましょう。
ステップ1. 自社の強みを抽出
自社の強みとして思いつくものを抽出します。これには2種類の内容が含まれます。
- 自社の持つ既存の能力から拾い出す
- 所有または入手可能な経営資源から新たな技術や能力を生み出す
これは、経営者1人だけが考える必要はありません。社員から広く聞くことで、新たな発見に繋がる可能性も十分にあります。ここでは能力の強さは考えず、思いつくものを羅列してみましょう。
ステップ2. コア・コンピタンスとして適正か判定
次に、羅列した能力がコア・コンピタンスとなり得るかの判定を行います。ここで判定基準として登場するのが、先述の「コア・コンピタンスの3条件」です。
- 顧客への価値提供度
- 模倣される可能性の低さ
- 他商品・他分野への応用性
羅列した強みに対し、この3つを判定基準として点数を付けます。コア・コンピタンスの定義は、そのままコア・コンピタンスとしての適正度を判断する基準となるのです。
ステップ3. コア・コンピタンスレベルの確認
こうして点数をつけた能力を集計します。漠然と「自社の強み」だと思っていた能力も、判定によるフィルターを通すことで、コア・コンピタンスとしてのレベルを確認できます。点数が高い=レベルが高い能力こそ、コア・コンピタンスとして育てていくべき能力ということになるのです。
ステップ4. コア・コンピタンスとして明確化
コア・コンピタンスとして適正な能力が判明したところで、それをさらに明確にします。具体的に次のような項目を考えます。
- どのような顧客・セグメントを対象とするか
- その顧客にどのようなメリットがあるか
- コア・コンピタンスレベルの現在値と目標値
- コア・コンピタンスレベルを上昇させるために必要なこと
これらのことを明確化しておくことで、コア・コンピタンスのレベルアップに向けて、どのようなプロセスが必要となるのかが具体化します。また、コア・コンピタンスとしてどの程度成長したかを随時確認することができます。
まとめ
コア・コンピタンスは、強化していくべきものです。企業の置かれた環境が悪化した際には、企業のゆく末を左右するほどコア・コンピタンスの見極めが重要となる場合もあります。これからの経営向上を図るためには、漠然と自社の強みを捉えるだけでなく、競争に勝つための最大の武器としてコア・コンピタンスを考えましょう。
参考: