電子帳簿保存法・インボイス制度
経費精算の際にデジタルカメラやスマートフォンで撮った領収書の写真が使えますか?- e文書法/電子帳簿保存法に関する質問
e文書法/電子帳簿保存法に関して、よく聞かれる質問とその回答をまとめました。電子帳簿保存法では、領収書を電子化して保存することが可能ですが、スキャナーだけではなく、デジタルカメラやスマートフォンで撮った写真が使えるか迷っている方が多いようです。以下では、その回答について、みていきましょう。
質問:デジカメやスマホで電子化した領収書を経費精算に使えますか?
回答:はい、使えます。平成28年度の電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件改正により、領収書等を受領した本人が、 オフィス以外の場所(外出先等)で電子化を行えるようになりました。そのための効果的な入力の手段として、「デジタルカメラやスマートフォンの利用」が認められています。
電子帳簿保存法のスキャナ保存制度とは、紙で受領した国税関係書類をスキャナ等でスキャンして電子化し、電子ファイルの形式で保存するために制定された制度です。国税関係書類とは、税法上(法人税法や 消費税法等)保存義務のある決算書類や取引書類のことを指し、取引書類は具体的に、領収書、請求書、 契約書、見積書、注文書等の、取引に関し交付される書類が該当します。国税関係書類のうち、紙で受領したものがスキャナ保存制度の対象となります。
ここで、紙の領収書・請求書を電子化し、保存する目的を考えてみましょう。当初、議論されていた国税関係書類の電子化の目的は、コスト削減と生産性向上です。例えば企業における立替経費精算の現場では、領収書を台紙に糊付けして、経費申請書類を作成し、申請書類に台紙を添付して上長に回覧し承認を得て、本社経理部門へ送付し、人手を使って一つひとつの領収書と申請された経費の内容を確認、整理・ファイリングし、倉庫に送付し7年間(欠損金の繰越控除を受ける場合は最長10年間)紙の原本を保管する…という、領収書の保管コストや倉庫への輸送コスト、人件費といった無駄なコストや、煩雑な作業が多方面で発生していました。
それらのコストの削減に向けて電子化が推進されましたが、平成27年度の規制緩和では重要な点が抜けていました。それは、スキャナを用いた電子化のため、領収書を受領した者は、必ずオフィスに帰り、第三者に電子化を依頼しなければならないという点が解消できていなかったことです。
大量の領収書を受領する主な部門は、営業部門になります。タクシーや新幹線・飛行機等での交通費、ホテルの宿泊費、接待交際費等、企業における領収書の多くは営業部門で発生します。平成27年度の規制緩和では、営業活動を行いながら、会社の経費を使ったら経費精算のためだけにオフィスに戻らなければなりませんでした。加えて、自分以外の誰かに、電子化をお願いしなければならないという問題が解決されていませんでした。
しかし、上記、回答の通り、平成28年度の改正により、領収書等を受領した本人が外出先等で電子化を行えるようになり、そのための効果的な入力の手段として、デジタルカメラやスマートフォンで撮った写真が認められることになったのです。
経費精算時の領収書電子化におけるデジタルカメラやスマートフォンの利用に関する詳細は、「電子帳簿保存法はこう活用する!領収書・請求書電子化完全ガイド」をご覧ください。
電子帳簿保存法について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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<プロフィール>
細田 聖子(ほそだ せいこ) 公認会計士・税理士
2012年、公認会計士登録。2016年、税理士登録。1999年から香港留学。2003年から2008年まで、上海でOL、日本語教師等の中国勤務。2010年、公認会計士試験論文式試験合格。2012年より、中国深センの会計事務所等を経て上海勤務となるも、2015年、乳がん告知により帰国。日本で治療をしながら大阪の税理士法人に所属。2018年5月に独立し、フリーランスのライターとして執筆活動など様々な業務に従事。
(執筆:細田聖子)