出張・経費管理トレンド

『IDE-現代の高等教育』競争力が問われる大学の変革期 ~浸透しない大学事務業務DXの現状~

SAP Concur Japan |

この度、『IDE現代の高等教育 NO.653 2023年8-9月号(8月1日発行) 「大学職員の業務改革」』に、弊社ディストリビューション統括本部 公共営業部 部長 福田、ディストリビューション統括本部 公共営業部 パブリックエグゼクティブ 高橋の2名による寄稿記事が公開されました。全文は本誌にてご確認いただければと思いますが、本ブログでは寄稿文の前半(1、大学事務のデジタル化の現状 2、事務業務軽減によるコア業務への注力が鍵)を公開いたします。

はじめに

 株式会社コンカーは,出張・経費精算,請求書管理などに関わるクラウドソリューションを展開する企業である。1994年の創業からビジネスにおけるコスト管理の領域でイノベーションを実現し,現在は,全世界150カ国で8,000万人以上が利用。日本においても9年連続トップシェア(※1)の経費管理クラウドを提供している。

民間企業ではデジタル化が進展しており,特に出張・経費精算や請求書支払業務などについては,クラウドサービスの利用企業も増えている。しかしながら,大学での事務業務のデジタル化はこれからだと考えられる。

当社では,大学事務デジタル化実態調査を2020年の12月(サンプル数412)と2023年の4月(サンプル数400)に実施した。その結果,回答者自身の業務について,よりデジタル化が必要かという設問には〈そう思う〉と回答する人が2020年調査では82%,2023年調査でも74%に上り,減少はしたものの,デジタル化が必要と感じている教職員が依然として多いことが判明した。この背景にはどんな課題があるのか,またどう解消していけばいいのか,実態調査の結果や先行事例から考えてみる。

※1 出典:ITR「ITR Market View:予算・経費・サブスクリプション管理市場2023」経費精算市場:ベンダー別売上金額シェア (2014~2022年度予測)

1.大学事務のデジタル化の現状

  実態調査の結果をいくつか紹介する。2020年と2023年の両調査で,大学における講義などの学生支援の部分と,事務業務のそれぞれに対しデジタル化されているかという問いを行った。講義に関しては80%を超える高い割合で〈そう思う〉と回答があったが,事務業務については50%台であり,コロナ禍を経てもデジタル化が進み切っていない現状が明らかになった(図1)。
デジタル化の現状(2020年、2023年比較)

事務業務のデジタル化を,“紙の帳票や表計算ソフトでの手入力作業を最小化してシステム上で処理を行うこと”と定義し,それが必要な項目を問うた設問(2023年,複数回答)も設けた。必要と回答があった上位3つは「財務・会計(出張費用の精算の手続き)」が45.1%,「財務・会計(研究に必要な物品の購入・支払の手続き)」が43.3%,「学生支援(履修・講義・成績管理・提出物管理)」が42.3%であった。

前述の通り, 講義などの学生支援はデジタル化が進んでいるが,事務業務のデジタル化が進まない理由の問いに対する回答(2023年,複数回答)は,「従来からの慣習」56%,「必要なツールがない」30%,「学内規定上の問題」21.3%,「外部機関からの要請(会計監査院の監査に原紙を求められるなど)」15.8%となった。従来からの慣習やルールを変えることに抵抗があることがうかがえる。デジタル化の必要性や浸透率の数値に変化が見られない理由もこれらの要因が関係していると考えられ,根本的な解決法が見出せなければ現状の打破は難しい。
デジタル化が進まない理由(2023年調査)

大学での経費精算処理の実態を見ると,会計システム(予算管理システム)に情報を手作業で入力する方法をとる学校が多い。経費を使用するには紙の申請書に領収書や請求書などを添付し,何人もの確認担当や管理者に回覧,承認のための押印の後,経理部門に提出。経理部門はその内容を再度確認して会計システムに入力し処理を進める。

このような承認担当が多い理由の1つが,不正リスクに対応するためだ。2023年の実態調査では新たに不正に関するアンケートも行なった。設問「研究費・経費・出張費用などの処理において不正のリスクを感じますか」に対して「リスクがある」と答えたのは42%だった。また,設問「研究費,経費,出張費用などの不正抑止や不正が行われていないかのチェックは,どのように行なっていますか」の1位は「複数の担当者が目視でチェック」で44.3%となった。不正チェックに関して「チェックは行っていない」「わからない」と回答した人を除く人への設問「研究費・経費・出張費用などの処理において,不正が行われていないかのチェック業務は負担になっていますか」では,負担になっていると回答した人が66.7%となった。一方,日付や金額が自動的に入力され不正抑制やチェック負担の軽減が期待できる「法人カードでの購買」はわずか4%となっている。紙の領収書・請求書を起点とした規定・処理手順となっているため,不正を見つけるための人的負担は大きいことがわかる。
特にリスクが高いのは「出張費」の45.5%,「物品購入費(研究用)」の42.5%,「接待交際費」の35.5%となった。
特に不正リスクが高いのはどの経費か?(2023年調査)

2.事務業務軽減によるコア業務への注力が鍵

 コロナ禍によって,大学に求められるデジタル化の上位項目である「学生支援(履修・講義・成績管理・提出物管理)」については大きく加速したと言える。しかし,財務・会計などに関連した事務業務においては,外出が制限されるなかでも紙の帳票のチェックと押印のために出勤するなど,非効率な業務が改善できなかった学校が多い。

現在は従来のやり方で処理することができていても,今後は急速な少子化に備えて事務業務のデジタル化も求められてくるだろう。少子化によって運営の源泉となる受験料や入学金などの収入は減り,予算も減少傾向にある。そのなかで他校との差別化を図るには,学生に選ばれるための競争力を身につける必要があるだろう。また,少子化とともに労働人口の減少も大きな社会課題となっている。経費精算や請求書管理などの事務業務は,手入力の手間を省き,システム活用による管理・審査を均一化し,人を介さない業務フローにするなど効率化・省力化することで,限られた人的資源を競争領域の業務に投入していくべきではないだろうか。

民間企業の場合,社員を面倒な業務から解放してより価値の高い業務に充てるため,デジタル化を推進する傾向にある。クラウドサービスの利用なども含め,デジタル技術を活用する事で不正抑止しつつ効率化する多くの実績も示されている。大学においてもそうなるべきで,従来の慣習・規定にとらわれないアプローチが必要だ。

民間企業では,経営者や役員などが将来像を描き,業務変革の旗を振るリーダーとなることが多い。だが大学においては,トップが将来像を示すことはあっても,業務に関する変革を直接指示するというよりは,現場からの要望を集め承認する傾向が強い。大学における業務変革,事務業務の効率化も,民間企業同様トップの旗振りの基に推進する,もしくは,業務を担当する総務・財務部門や情報システム部門から強いリーダーシップを発揮する人材を抜擢・支援するような取り組みが不可欠となるのではないだろうか。

ーーーー
続きの購読は『IDE現代の高等教育 NO.653 2023年8-9月号(8月1日発行) 「大学職員の業務改革」』にてお願いいたします。
また、大学事務業務のDXにご関心をお持ちいただけましたら、ぜひこちらの資料もご覧ください。
【改訂版】ニューノーマルな大学経営を実現する 事務組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)とは

その他、詳細に関するお問い合わせはこちら!

出張・経費管理トレンド
株式会社コンカーと、三井住友カード株式会社は、戦略的業務提携を行った。
もっと見る
出張・経費管理トレンド
出張・経費管理クラウドのリーダーである株式会社コンカー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:三村 真宗、以下 コンカー)は、株式会社インフォマート(本社:東京都港区、代表取締役社長 :中島 健、以下 インフォマート)の請求書電子化ソリューション「BtoBプラットフォーム 請求書」のConcur Invoice連携機能を、SAP Concur App Centerのサービスとして提供開始します。
もっと見る
出張・経費管理トレンド
前回は電子インボイスの日本標準仕様日本版Peppolの検討背景や今後の展開予定についてご紹介しました 第回はこちら 第回では活用することでどのように業務が変わるのかそして実際の事例等について...
もっと見る