経理・総務の豆知識
経理業務効率化の重要性と効率化を進めるためのポイントを解説 ~次世代経理を目指すシリーズ~
経理業務は定型業務が中心ではあるものの、その多くは煩雑なうえ、誤りがあってはならない業務です。そのためどうしても手間がかかってしまいます。しかし、経理業務の効率化が進まず遅滞が慢性化すれば、迅速な経営判断ができず、会社に不利益をもたらす可能性もあります。そこで今回は、経理業務の効率化を実現するためのポイントを説明します。
効率が悪い経理業務が引き起こすデメリット
企業が行う業務は経理に限らず効率化を図る必要がありますが、なかでも経理業務が効率化されていないことは、経営に大きな影響を及ぼす重要なポイントです。悪影響の理由として次の点が挙げられます。
迅速な経営判断が難しくなる
経営者が自社の経営状況を判断する手段のひとつに決算書があります。企業は年に1回年次決算を行い、決算書を作成しますが、年次決算だけでは正確な自社の現状把握はできません。そこで重要になるのが月次決算です。
毎月、10日ぐらいまでに前月の月次決算を終えれば、年間計画書と月次決算の数字を確認しながら迅速な対策を講じられます。しかし、経理業務が効率化されていなければ、早い段階での月次決算も行えず、対策も遅れをとってしまうでしょう。
計算違いや請求漏れといったミスが起こりやすくなる
経理業務を効率化していないと、計算違いや請求漏れといったミスが発生しやすいです。原因として、業務プロセスが定まっておらず無駄な作業が増えてしまう、全体として業務負荷が多くなってしまうことなどが考えられます。
無駄な作業の増加や業務負荷の増大は、担当者に手間がかかるだけではなく、重要な作業を行う時間の減少や、集中力の低下といったデメリットも引き起こします。その結果、簡単な計算を間違えてしまったり、請求漏れ、支払い忘れといったミスを犯してしまったりといった可能性が高まるのです。経理業務のミスは企業の損失や信頼を損ねることに直結するため、効率化が進まないのは大きなデメリットです。
経理業務の効率化ができない原因
経理業務の効率化が進まない理由として、慢性的な人手不足が考えられます。少子高齢化の影響もあり、日本では多くの業種で人手不足が慢性化しつつあるのが現状です。なかでも経理部門は営業や販売部門のように直接的な利益を生み出す業務ではないこともあり、人員の割り振りがあと回しにされるケースが少なくありません。そのため経理部門は、人手不足によって日々の作業に追われてしまい、効率化を進めるに至らなくなってしまう傾向があります。また、日々の業務が激務となることで退職者が生じると、さらなる人手不足へと負の連鎖が生じてしまいます。
経理業務の効率化を図る理由
人手不足に陥っている経理業務では、次のような課題を抱えています。これらの課題を解決するためにも、効率化が欠かせません。
業務プロセスのブラックボックス化
経理は定型業務が中心ではありますが、簿記や会計の知識がないとスムーズに進められない業務も多いです。簿記・会計の知識が乏しい従業員では対応できないといった可能性もあり、特定の担当者のみが業務を担うことで、業務プロセスがブラックボックス化してしまう懸念があります。
本来であれば業務プロセスのマニュアル化を行い、誰でも対応できるようにすべきでしょう。しかし、マニュアル化するにも時間の余裕が必要です。人手不足の状況ではマニュアル化に対応できず、効率化も進まないといった問題が多くの企業で起きています。
デジタル化未対応
2022年1月から施行された改正電子帳簿保存法では、「電子取引における電子保存」が義務化されました。しかし、実際には2023年12月31日までの宥恕(宥恕)措置が取られています。要因となったのは、中小企業はもちろん、大企業であっても改正電子帳簿保存法への対応が完全にできていなかったことです。
効率化につながるシステムやツールを導入しても、入力は手動となれば効果は限定的になってしまいます。また、自社がデジタル化を進めていても、取引先が対応していなければ紙の請求書を送付しなくてはならないケースもあり、効率化の実現には時間がかかりそうです。
電子帳簿保存法改正については、「2022年1月施行、電子帳簿保存法の改正点のポイントを解説」をご覧ください。
確認作業の多大な手間
経理業務では、軽微なミスであってもそれが自社の大きな損失につながる場合があります。計算ミスで1桁間違えてしまえば大きな損失になるだけではなく、取引先からの信頼を失ってしまうかもしれません。
そのために1回ではなく2回、3回と人を替えて確認作業を行うとなると、多大な時間と手間がかかってしまいます。これも経理業務の効率化が進まない理由のひとつです。
経理業務の効率化を実現させるステップ
思うように進まない経理業務の効率化を実現させるには、思い切った変革が求められます。具体的には次のような点について大きく変えていく必要があるでしょう。
デジタル化への対応
前述したように、電子取引における電子保存義務は、現時点では2023年12月31日までの宥恕措置が設けられているため、従来のように紙での保存も限定的に認められています。しかし、いずれにしてもデジタル化への対応は避けられません。
特に経理業務は帳簿や領収書、請求書など扱う書類の種類も多いため、システムへの反映や業務フローの構築など、電子化への移行に時間がかかると考えられます。そのため、まずは、できるだけ早い段階でデジタル化を進める必要があるでしょう。
また、デジタル化はペーパーレス化だけではなく、キャッシュレス化も重要なポイントです。法人用クレジットカードや電子マネーを活用し、小口現金の取り扱いを最小限に抑えられれば経理業務の効率化は大幅に進みます。
経理業務のデジタル化については「経理にもDX化が必要!DX化を行うメリットと実現する方法とは」をご覧ください。
業務プロセスの可視化
次に、誰が担当しても同じように業務を進めるためには業務プロセスの可視化が欠かせません。業務のブラックボックス化を放置していると、担当者が異動や退職でいなくなった際、誰も対応できなくなってしまいます。
まず経理業務全般のプロセスを洗い出し、無駄な工程はないか、業務を滞らせる工程はないかを整理しましょう。その後、改善した業務プロセスを図に表し、マニュアルを作成すれば人員の増減があった際でもスムーズに引継ぎができるようになり、効率化が実現します。
システム・ツールの導入
デジタル化や業務プロセスの可視化を終えてからシステムやツールを導入しないと、その効果は最大限に発揮できません。
例えば、ペーパーレス化が進んでいない状態でシステムやツールを導入すれば、データ入力はすべて紙の請求書や領収書を見ながらの手入力になってしまいます。これではミスが起こるリスクは軽減できません。また、業務プロセスの可視化を終えていないと、どの業務にシステムやツールを活用すればよいかが分からず、効果を生かしきれなくなります。
これらのステップを守りながら、業務効率化をスムーズに行いましょう。
システムやツールの導入はデジタル化・業務プロセス可視化のあとに行うのがポイント
ひと口に会計や経理を効率化するシステム・ツールと言っても、その種類はさまざまです。自社の課題解決に寄与する機能があるシステム・ツールを選ばなければなりません。そのため、自社に最適なシステム・ツールを導入するには、まず自社の経理業務を可視化させ、課題点を明確にすることが重要です。
また、デジタル化を進めることも欠かせません。システムやツールの導入によりデジタル化が進むのではなく、デジタル化を進めたからこそ、システムやツールの性能を最大限に引き出せるのです。経理業務の効率化を進めるにはシステムやツールの導入が必須ですが、導入の順番を間違えず、自社に最適なシステム・ツールを選択するようにしましょう。
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