経理・総務の豆知識

管理会計とは?目的やメリット、財務会計との違い、適切に行うポイントを解説~次世代経理を目指す~

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会計業務は、大きく外部に向けて行うものと内部に向けて行うものに分けられます。そのうち管理会計は内部に向けて行われる会計業務です。通常、決算書は金融機関や株主などに外部に向けて作成するものではないかと思われるかもしれません。しかし、経営判断の材料として、内部に向けた決算書の作成も外部向け同様、重要な役割を果たすものです。今回は、内部に向けた会計業務である管理会計について、その目的や実施メリット、適切に行うポイントについて紹介します。 

管理会計とは? 

管理会計とは、自社の経営判断を行うための材料のひとつとして、社内向けに行う会計業務です。主に経営者向けに行う会計業務で、リアルタイムに経営状況を把握できるようにすることによって経営者の意思決定をサポートします。 

月ごとに作成されるのが一般的ですが、企業によっては、毎週、四半期ごとなど周期は決まっていません。また、自社で重視する指標を用いるため、使用する指標は企業によって変わります。さらに、社内の人間が理解できれば用が足りるため、どのようなフォーマットでまとめるかといった厳密なルールも特にありません。 

財務会計との違い 

管理会計は社内向けの会計業務ですが、財務会計は金融機関や株主など外部に向けて行う会計業務です。また財務会計は法律による規定があります。 

財務会計は、金融機関や投資家などから資金調達をする際に提示するための会計資料で、必ず報告する義務があります。また、毎年、法人税支払いで税務署に申告する決算書作成も財務会計業務のひとつです。そのため、自社独自のルールではなく、すべての会社が会社法や法人税法といった法律に則った所定のルールに沿って行う必要があります。 

管理会計を行うメリット 

企業によって、管理会計を行わないケースも少なくはありません。しかし、管理会計の実施は、企業にとって多くのメリットがあります。具体的には次のとおりです。 

  • リアルタイムでの経営状態が可視化される 

管理会計を行うメリットのひとつは、リアルタイムかつ調整のない経営状態が可視化される点です。 

財務会計は、四半期や一年に一回しか実施しないうえ、節税のための対策や調整などを行った数字であるため、リアルタイムでの経営判断には生かせません。これに対し管理会計は、週ごと、月ごとに実施するため、常にリアルタイムでの経理状態が可視化されます。 

さらに管理会計は節税などを考慮する必要がないため、調整のない数字が明確になり、年間計画書と数字を照らし合わせその都度、有効な手段を講じられるメリットがあります。 

  • 部門別の管理がしやすくなる 

管理会計は、自社の現状把握を目的として行うため、部門ごとに分けて経理状況を可視化させるのが一般的です。その結果、「どの部門が予算達成(もしくは未達)しているか」などそれぞれの業績の評価がしやすくなります。 

予算を達成している部門にはさらに予算を追加して増産、広告宣伝を行い、また、未達部門は課題点の抽出を行い、無駄な部分をカットするなど、具体的かつスピーディーな判断ができます。後述する原価管理によって利益率が高い(低い)部門を知ることも可能です。利益の最大化はもちろん、損失を最小限に抑える施策を迅速に実行できるのもメリットといえます。 

管理会計の種類 

管理会計は、法律でルールが決まっているわけではないため、基本的には企業によってどのような情報を管理するかは自由です。ただし、一般的には次のような手法で行われます。 

予実管理 

中長期で立てた予算の目標数値と、一定期間の実績数値を比較分析するのが予実管理です。具体的には、売上・原価・経費・利益などについて、それぞれの予算と実績数値を照らし合わせ、予算どおりに進んでいるかを確認します。 

予実管理は、サービス、部門などに分け月次決算とあわせて行いましょう。予算に大きく届いていない部門、サービスがあれば、次月はどの部分に注力すべきかが明確になり迅速な施策実行が可能です。 

原価管理 

一言でいえば、コストを把握することです。収益とコストから、現状でどれだけの利益が生まれているかの確認は経営において欠かせません。そのための、ひとつの方法が原価管理です。販売している商品、サービスにどれだけの原価がかかっているのかを管理し、価格設定や在庫調整を行っていきます。 

原価管理を行うには、製造業であれば原材料や部品コスト、販売業であれば仕入単価などを確認しますが、同時に人件費や設備費なども加え、正確な原価を算出しましょう。 

原価の目標額と実際に発生した額を比較分析し、無駄な部分があれば改善によってコスト削減を行うことで、利益を生み出せる体制を構築します。 

経営分析 

予実管理で全体的な現状把握を行い、原価管理で利益がどれだけ出ているかを確認したら、次には経営分析によって現状の成長率、損益、資産などを明確にします。 

分析に使う指標は、企業によってさまざまです。一般的には収益性や安全性、生産性、成長性などを分析します。また、管理会計での経営分析においてもっとも重視すべきは、限界利益です。 

限界利益は、売上高から変動費を差し引いて算出します。ただ、ここで注目すべきは固定費が限界利益を上回っているかどうかです。人件費や地代家賃といった固定費が限界利益を上回っていれば、それは利益が出ていないことを意味します。 

限界利益と固定費の差額がない状態を損益分岐点と呼びますが、管理会計では常に損益分岐点を意識し、マイナスの場合は、変動費や固定費の削減を検討しなければなりません。 

管理会計を行う際のポイント 

管理会計は、年間計画表の目標数値と実績数値の差異を定期的に確認できます。それによって、迅速な改善策を立てられるのが大きなメリットです。しかし、毎週、毎月のように比較分析するための情報収集、資料作成をしなければならないため、経理担当者の負担は大幅に増加します。スムーズな管理会計を実現させるには、次の2点を実行することが重要です。 

  1. 事前準備をしっかりと行う 

管理会計は必要なデータの抽出や計算、グラフ化など毎月行う定型業務が中心となるため、あらかじめチェックリストを作成しておき、誰でも作業が行えるようにします。チェックリストがあれば業務の属人化を避けられるだけではなく、必要な指標の確認漏れも防げるのに加え、正確性も増し、迅速な作業が可能です。 

  1. システム導入により通常業務の効率化を図る 

システムの導入により通常業務の効率化を図ることも欠かせません。なぜなら管理会計を実行できない要因のひとつとして、通常業務が忙しく管理会計にまで手が回らない点があるからです。そのため、管理会計を実現させるには、通常業務の効率化が欠かせません。 

効率化のポイントはシステムの導入です。財務管理システムや経費精算システムの導入により、手作業による通常業務が効率化され、管理会計に割ける時間が増加します。 

管理会計のポイントは経理業務の効率化 

自社の経営判断を行うための重要な材料である管理会計。スピーディーな経営判断が求められる現在において、リアルタイムで経営状況の把握が可能な管理会計は欠かせない業務といえます。 

しかし、経営判断に必要な情報を収集し、予算と実績の比較検討を毎月のように行うのは経理担当者にとっては大きな負担となってしまうでしょう。そのため、事前準備を行ったうえで実行に進みましょう。また、システム化によって経費精算や請求書管理など通常業務の効率化を図り、管理会計に集中できる環境を整備することもおすすめです。 

煩雑になりがちな経費精算や月末月初に溜まってしまう請求書管理業務が効率化すれば、その時間を管理会計の準備に使うことができ、スピーディーな経営判断の実現につながります。 

 

2021 Spend Insights Report 

コンカーでは、企業の管理会計の課題を解決するため、2021年のビジネス環境について調査を行いました。管理会計についても有用な情報を数多く記載していますのでご一読ください。

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