感染予防対策としての宿泊施設利用料やPCR検査費用、自宅スペースの消毒費用はどう会計処理する?
経費精算に関してよく聞かれる質問とその回答をまとめたブログシリーズ、今回は感染予防対策として発生する宿泊施設利用料や交通費、PCR検査費用やテレワークのための自宅スペースを外部業者に消毒してもらった際の費用の会計処理がテーマです。
コロナ等の感染が疑われる従業員が隔離期間中にホテルなどの宿泊施設で勤務することを認めている場合があると思います。その際の宿泊施設利用料や宿泊施設までの交通費はどのように会計処理すればいいのでしょうか?また、会社の依頼で従業員がPCR検査を受けた場合の費用はどのように会計処理すればいいのでしょうか?さらに、在宅勤務に関して、自宅スペースを外部業者に消毒してもらった際の費用はどのように会計処理すればいいのでしょうか?以下で詳しくみていきましょう。
質問:
コロナ等の感染対策として、宿泊施設で勤務することを認めている場合の宿泊施設利用料や宿泊施設までの交通費はどのように会計処理すればいいのでしょうか?会社の依頼により受けたPCR検査費用はどのように会計処理すればいいのでしょうか?在宅勤務に関して、自宅スペースを外部業者に消毒してもらった際の費用はどのように会計処理すればいいのでしょうか?
回答:
感染予防対策としての宿泊施設利用料や宿泊施設までの交通費は、旅費交通費として会計処理します。会社からの依頼で受けたPCR検査費用は、福利厚生費として会計処理することができます。また、テレワークに関連して従業員の自宅の業務スペースを消毒する際に業者に支払う費用は、支払手数料などとして会計処理することができます。
解説:
・宿泊施設の利用料や宿泊施設までの交通費は、旅費交通費として会計処理する
コロナ等の感染症に関する感染予防対策として、感染が疑われる従業員に対して、会社が宿泊施設などで勤務することを認めている場合があります。この場合、その業務のために通常必要な費用(宿泊施設の利用料、宿泊施設までの交通費)であれば、通常の経費精算と同様に、領収書、請求書、旅費交通費精算書等の提出により、経費精算することができます。会社が宿泊施設に直接利用料を支払う場合も同様で、これらは通常、旅費交通費として会計処理します。
・会社からの依頼で受けた PCR検査費用は、福利厚生費として会計処理する
業務命令や会社からの依頼でPCR検査を受ける場合があります。この費用は、業務のために通常必要な費用とされます。通常の経費精算と同様に、領収書、請求書等の提出により、経費精算することができます。会社が直接費用を支払う場合も同様で、これらは通常、福利厚生費として会計処理します。
・テレワークの業務スペースの消毒費用は、支払手数料として会計処理する
テレワークに関連して、従業員の自宅の業務スペースを消毒する必要がある場合、外部業者に委託して消毒してもらうことがあります。この場合、その費用は、業務のために通常必要な費用であれば、通常の経費精算と同様に、領収書、請求書、見積書等の提出により、経費精算することができます。会社が業者に直接費用を支払う場合も同様で、これらは通常、支払手数料として会計処理しますが、会社によっては外注費、福利厚生費、雑費などとして処理することもあるでしょう。
・給与として課税対象となる場合は?
上述にて感染予防対策としての宿泊施設利用料やPCR検査費用、自宅スペースの消毒費用の会計処理について説明いたしました。では、これらの費用を会社からの指示や会社の承諾を得てではなく、従業員が自己の判断により支出した場合も経費精算できるのでしょうか。
この場合、答えはNo(経費精算できない)となります。自己の判断により支出した宿泊・PCR検査・消毒費用などは「業務のために通常必要な費用」以外の費用に該当するためです。このような費用について、会社が別途給与として支給することは可能ですが、給与課税対象となりますので注意が必要です。
参考)国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ (nta.go.jp)
まとめ
コロナ禍で発生する様々な費用については、今までとは違う判断が必要になることもあり、処理にも注意が必要です。感染予防対策としての宿泊施設利用料や宿泊施設までの交通費は、旅費交通費として会計処理します。会社からの依頼で受けたPCR検査費用は、福利厚生費として会計処理します。テレワークに関連して従業員の自宅の業務スペースを消毒する際に業者に支払う費用は、支払手数料として会計処理します。税務上の取扱いがどうなるのかのFAQも多く出ていますので、よく読んで対応するようにしましょう。
【関連ブログ】テレワークのレンタルオフィス代やワークスペース利用の費用はどう経費精算する?
<著者プロフィール>
細田 聖子(ほそだ せいこ) 公認会計士・税理士
2012年、公認会計士登録。2016年、税理士登録。1999年から香港留学。2003年から2008年まで、上海でOL、日本語教師等の中国勤務。2010年、公認会計士試験論文式試験合格。2012年より、中国深センの会計事務所等を経て上海勤務となるも、2015年、乳がん告知により帰国。日本で治療をしながら大阪の税理士法人に所属。2018年5月に独立し、フリーランスのライターとして執筆活動など様々な業務に従事。