まだ副業禁止なの?副業OKで得られる「企業メリット」を知っておこう
これまで日本の企業は、そのほとんどが副業を禁止していました。ところがここ数年、「副業OK」を掲げる企業が少しずつ増えています。なぜこのタイミングで副業が解禁されているのでしょうか? 政府も含めた副業についての取り組みと、副業をOKとすることで自社にどのようなメリットがあるのかを解説します。
日本に根強い御恩と奉公の体質
日本の企業には、長年続いてきた制度と、それによって作り上げられた体質があります。
企業は従業員に対し、終身雇用や年功序列型賃金といった「御恩」を与えてきました。その代わりに、従業員は会社に対して忠誠を尽くし「奉公」する、という関係が長年続いてきたのです。これまでの日本は、企業と従業員が、「御恩と奉公」によって結ばれるような体質で成り立ってきました。
これと同時に、就業員は一社のみに勤めるのが美徳とされ、副業は原則禁止というのが社会通念のようなものでした。しかし今、この関係を見直す動きが活発になってきているのです。そこにはどういった背景があるのでしょうか。
副業鎖国・日本に新しい動き
2016年、「一億総活躍社会」実現を掲げ、「働き方改革実現会議」が発足しました。これは日本の企業、またその企業で働く人たちの生産性を向上させつつ、ライフワークバランスの実現を目的とした改革を検討・推進するためのものです。
この働き方改革実現会議において、自由な働き方推進の一環として副業解禁が提示されたのです。
具体的な取り組みとして、2016年には「副業解禁促進に向けた官民意見交換会」が開催されました。内閣府や経済産業省といった行政サイド、企業経営者や人事担当者など民間サイドに有識者も交え、副業について初となる、公での意見交換が行われたのです。
ここでは、企業側が今ひとつ副業解禁に踏み出せない理由として、「副業解禁によって何が起こるか予測できない」ことが挙げられました。もうひとつ、多くの企業が副業解禁に踏み出せない理由として考えられるのが、就業規則についてです。
昭和22年施行の労働基準法では、10人以上の従業員を使用する使用者は、就業規則を届け出ることとされています。この参考にするため、「モデル就業規則」が厚生労働省から公表され、多くの企業がこのモデル就業規則に沿って就業規則を定めていると思われます。
モデル就業規則は過去何度か改定されてきました。しかし、これまで長年の間記載され続けてきた項目があります。従業員の遵守事項における「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という一文です。これは副業禁止規定と呼ばれ、「国の定める模範の就業規則」にあることから、日本における社会全体の常識となっていました。
ところが、働き方改革と副業解禁の機運が高まり、平成30年1月に、とうとうこのモデル就業規則の副業禁止規定が改定されました。「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とし、副業禁止から原則容認へと切り替えたのです。
こうして、日本の社会では長く閉ざされていた「副業鎖国」とも言える現状が、少しずつ変わろうとしているのです。
副業の黒船到来か
2016年、経済産業省は「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業」(調査機関:2014年11月~2015年2月)について報告書を公表しました。これによると、副業を認めていない企業は85.3%、容認している企業は14.7%。また、推奨している企業は0%、1社もないという結果でした。
この調査を行ったリクルートキャリアでは、2017年1月に再調査を行っています。約2年の時が流れ、容認は22.6%、推奨は0.3%とどちらも少し増加しています。
政府による取り組みや、自由な働き方を求める世間の声から、副業に対する考えにも少しずつ変化が見えているようです。
副業をOKで得られる4つのメリット
副業をOKとすることで、企業にとってもメリットがあります。その4つは次の通りです。
- 採用窓口の拡大
今まで就職を見送ってきた人にも雇用の機会が与えられ、優秀な人材の発掘が可能になる。 - 人手不足の解消
短時間・掛け持ちでの労働をOKとすることで人手を確保できる。 - コストのかからない社員研修
社内だけでなく社外からも知識とヒントを持ち帰ることになり、新たなイノベーションにつながる。 - 企業ブランディング
副業OKを掲げることで企業の寛容性・柔軟性がPRされ、企業イメージの向上とともに優秀な人材も集まりやすくなる。
まとめ
このように、副業をOKとすることは企業にも多くのメリットがあります。ロート製薬が副業制度を導入したり、サイボウズ社長による「副業禁止を禁止」という言葉が有名になったりと、少しずつ副業解禁に流れは動き出しています。これからの日本は、副業の開国、そして文明開化を迎えることができるのか。今後も企業と働き手双方から注目されるでしょう。
参考: