上意下達と下意上達のメリットとデメリット
「上意下達ってホントに良くないの?」ダメな例として挙げられがちな上意下達。しかし、本当にそうなのでしょうか? 悪いことばかりではなく、場合によっては良い効果を発揮することもある上意下達と、その逆、下意上達のメリット・デメリットについて考えます。
上意下達と下意上達
上意下達、下意上達は、それぞれどのような意味でしょうか。ここではある課の課長と、社員の山田くんの会話で考えてみましょう。
上意下達とは
課長「山田くん、○○という指令が先ほど上から出たぞ」
山田「イエッサー! かしこまりました。すぐやります!」
このように、上層の意志によって下層が動くのが上意下達です。上層の意見・命令を、下層へと伝えて組織の意思疎通を図る手法で、「じょういかたつ」と読み、トップダウンともいいます。
下意上達とは
山田「課長、現場で出た意見なんですが、○○を取り入れたら効率化されるんじゃないでしょうか?」
課長「お、そうだな。よし、ちょっと上と掛け合ってみよう!」
このように、上意下達とは逆に、下層にいる者の意見が上層にいる者へと届く状態が下意上達です。こちらは「かいじょうたつ」と読み、ボトムアップともいいます。
上意下達のメリットとデメリット
上意下達と下意上達は、どちらが優れているというものでもありません。それぞれにメリットとデメリットがあります。
上意下達のメリット
- 迅速な意思決定
上意下達の最も大きく分かりやすいメリットが、このスピード感です。企業としての意思が上層により迅速に決定され、全体へと伝わることで、全体がそれに向けてすぐに動くことができます。このように、上意下達では迅速な経営判断と通達・実行が可能です。
- 組織の一体化
上意下達により成り立ち、それがうまく機能している組織では、上層と下層の信頼関係がすでに構築できていると考えられます。このような組織では、急きょ方針を変更した場合でも、全体が一体となってその方向に進むことが可能です。
- 社内リソースの集約
上意下達の場合では、経営陣または各部署のトップに優秀な人材を配置することで組織を機能させます。このように、社内リソースのうちで最も重要な人材を集約し、優秀な人材が少数の場合でも十分な効果を得ることが可能です。
上意下達のデメリット
- 指示待ちの発生
トップからの指令が重要な上意下達では、組織全体の動く速度はトップの判断や指示に依存し、もしそれがなければ完全に止まってしまうことになります。トップが積極的で活動的でなければ上意下達には向いていないともいえるでしょう。
- 改善点・課題発見の遅延
現場でなければ気付かない改善点や課題は、必ずどこの組織にもあります。しかし上意下達によって組織が機能するためには、強力な上層の意志決定が重要となるため、現場からの声は届きにくいという欠点があります。
- 現場の不満拡大
トップによる強力な意志決定は、ときとしてそれに従う人たちの不満を拡大させます。信頼関係のでき上がっていない状態で上意下達を振りかざしても、現場の不満が募るだけになってしまうでしょう。
下意上達のメリットとデメリット
それでは、下意上達にはどのようなメリットとデメリットが考えられるでしょうか。
下意上達のメリット
- 現場の意見反映
経営陣と現場の距離が遠い、つまり組織が大きい場合、経営陣は現場の様子を知る機会が少なくなります。このとき下意上達であれば、現場のちょっとした変化・気付き・改善案などが経営陣に伝わりやすくなります。
- 社員の意識向上
トップによる意思決定がすべてとなる上意下達と違い、下意上達では社員たちの声が通りやすく、自分たちが会社をより良くしていくんだという意識が自然に生まれます。
- 新たなアイデアの創出
固定化された経営陣と違い、現場は流動的で多様な人がいます。新たなアイデアやイノベーションが生まれる可能性は、ボトムアップの方が高いといえます。
下意上達のデメリット
- 現場の人材に左右される
下意上達では現場の裁量が大きくなります。このとき、現場の意見・意志が企業運営として適切でなければ、全体が間違った方向へと進んでしまうかもしれません。下意上達では現場にも優秀な人材が必要です。
- 企業の一貫性がなくなる
多様な人材によって構成されている下層の意見が組織の方向性を決定するため、企業としての一貫性が保てなくなることもあります。企業経営に「ブレ」が生じやすい原因となります。
- 意思決定の遅延
現場の意見をまとめ上げ、それを組織の運営に反映するには多くの労力と時間が必要です。これによりジャストタイムな意思決定や軌道修正は難しくなりがちです。
上意下達・下意上達どちらもうまく織り交ぜて
上意下達と下意上達、それぞれについてプラスに働く場面と、逆に経営にとってマイナスとなってしまう場面を紹介しました。
上意下達・下意上達ともにメリットとデメリットがあります。どちらにするのが得策かということではなく、その企業に合った方法を選べることが重要になります。また、複雑な現代の企業経営にあっては、場面によって使い分ける必要も出てくるので、バランス良く上意下達・下意上達をうまく織り交ぜて活用するのがベストです。
参考: