経理・総務の豆知識
電子化した領収書や請求書の保管方法
領収書や請求書の電子化に関連し、紙の領収書はどう管理したらよいか、迷う方が多いようです。以下では、この点について回答していきます!
領収書・請求書の電子化についてさらに詳しくはこちら:
質問:電子化した後の紙の領収書や請求書などはどう管理すればいいですか?回答:令和3年度税制改正により、領収書はスキャン後ただちに原本の破棄が可能になりました。不正防止やコスト削減、紙の原本の紛失リスク、電子化の徹底を図る目的からも、廃棄を強く推奨します。 |
令和4年1月1日以後適用される令和3年度税制改正により、領収書は紙の原本による確認が不要とされ、スキャン後ただちに原本の破棄が可能となりました。
この「令和4年1月1日以後適用」の時期については、領収書の保存をする時期ではなく、その取引が行われた時期により区分されます。課税期間が令和3年4月1日から令和4年3月31日までの会社であっても、課税期間の途中で今回の改正が適用される点に注意が必要です。
令和4年1月1日以後に行った取引であれば、今回の改正が適用されますが、令和4年1月1日前に行った取引については、改正後の要件は適用されず、改正前の要件が適用されます。
上記質問と同様、「画像で残すこと自体が不安なため、撮影やスキャンをし、電子化した領収書の紙の原本を保管し続けようと思うのですが、問題ありませんよね?」というような質問もよく受けることがあります。
確かに、電子帳簿保存法上、紙の原本を残しておくことは違法ではありません。しかし、電子化を開始する目的を、再度思い起こしてみましょう。
紙の原本の取り扱いついては、以下のような手間やコストがかかっています。
- 従業員が糊付けして提出するための手間(領収書の場合)
- 紙の原本を回収して、保管するための手間
- 保管に必要なコスト
- それら全体にかかる輸送コスト
加えて、紙の領収書を紛失した際の、従業員に対する経理担当者の対応作業の負荷も考えられるかもしれません。それらをなくすために、電子化を検討することが一般的であると考えます。
電子化を行うためには、少なからず、システム投資や人的な工数(事務処理フローの検討や社内での調整ごと等)が発生します。その上で、従来通り紙の原本を保管し続けるとなると、単純に考えて、二重コストになってしまいます。
また、紙の原本を残したままにしておくと、その原本で再度経費精算を行うような不正が発生する可能性があるため、紙の原本を回収し、廃棄することで、不正防止の内部統制を徹底することもできます。
「コストをかけてでも、紙の原本を保管した方がメリットがある」という場合でなければ、電子化を行う以上、やはり廃棄を前提とした業務改善、いわゆる「ペーパーレスへの取り組み」を行うことが、望ましいと考えます。
紙の原本は紛失するリスクもあるため、何らかの情報が流出するリスクも否定できません。何より「紙の原本がある」という安心感から、電子化の徹底が現場まで浸透せず、いつまでたっても 正しい運用ができない可能性もあります。
令和3年度税制改正により、領収書はスキャン後ただちに原本の破棄が可能になったことを踏まえ、やはり、領収書の電子化完了後、すなわち撮影やスキャンをした後の領収書については 紙の原本は廃棄することを推奨します。
領収書の電子化及び紙の原本破棄に関する詳細は、「【令和3年度税制改正対応】領収書・請求書電子化完全ガイド -大幅な改正を活かして今こそペーパーレス化へ!」をご覧ください。
保管期間についてはこちらの記事「電子化した後の紙の領収書や請求書などの書類の保管期間は?」をご確認ください。
※この記事は、2019.05.24に公開したものを加筆し更新したものです。
<プロフィール>
細田 聖子(ほそだ せいこ) 公認会計士・税理士
2012年、公認会計士登録。2016年、税理士登録。1999年から香港留学。2003年から2008年まで、上海でOL、日本語教師等の中国勤務。2010年、公認会計士試験論文式試験合格。2012年より、中国深センの会計事務所等を経て上海勤務となるも、2015年、乳がん告知により帰国。日本で治療をしながら大阪の税理士法人に所属。2018年5月に独立し、フリーランスのライターとして執筆活動など様々な業務に従事。
(執筆:細田聖子)