経理・総務の豆知識

接待交際費とは?概要と2024年の改正内容を解説【具体例あり】

SAP Concur Japan |

会社の経費について話をするとき、よく「接待交際費」という言葉を使いますが、これは経理上の正式名称ではありません。いわゆる接待交際費とは、法人税法における「交際費等」に該当するものです。交際費等は「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」と定められています。「交際費等」は本来損金不算入、つまり経費計上できません。しかし、一定の範囲で経費に計上することが可能です。適切に法人税計算を行うためには、あらかじめルールを理解しておくことが必要です。 

また、令和6年度税制改正の大綱により、交際費等の扱いも一部改正されました。企業は新しいルールに対応しなくてはなりません。 本記事では、交際費等とはいったいどのようなものなのか、また、交際費等を経費に算入するためのルールについて、事例を交えながら詳しく解説していきます。 

そもそも「接待交際費」とはなにか

接待交際費とは、取引関係や仕入先への接待や謝礼にかかった費用のことです。 

「接待交際費」と「交際費等」との違い

「接待交際費」とは、交際費の俗称です。しかし多くの場合、決算書類には「交際費等」として記載されています。税務会計における交際費が「交際費等」と呼ばれると考えるとよいでしょう。 

厳密には「接待交際費」と「交際費等」は異なりますが、ここでは一般的な呼称に合わせて「接待交際費」という用語で説明していきます。 

財務会計上は、取引先を接待したら全額を接待交際費として費用に計上することが可能です。しかし、法人税計算において課税所得を算出する税務会計では、「交際費等」は基本的に損金不算入であり、収益から差し引くことはできません。後述する一定の措置の範囲内でしか、経費(費用)として計上することができないのです。交際費等を理解して経理処理していくことが求められます。

関連記事:​その接待交際費ムダになってない?活きた使い方で利益増を狙おう!

接待交際費の定義 

接待交際費とは、取引先や事業に関係する者に対する接待や贈り物などにかかる費用のことです。国税庁では、次のように定義しています。 

「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。」 

上記の「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」には、会社(自社)の事業に直接取引関係のある者だけでなく、間接的に会社(自社)の利害に関係のある者、及び会社(自社)の役員、従業員、株主等を含みます。 

ただし、次の5項目は接待交際費には該当しません。 

  1. 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用 

  1. 飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます)のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が10,000円以下である費用 

  1. カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用 

  1. 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用 

  1. 新聞、雑誌等の出版物または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用 

参考:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁 

※令和6年税制改正により、交際費の範囲から除かれ会議費等で損金算入可能な接待飲食費の範囲が拡大されました 

これだけでは、ケースごとに悩む場合もあるでしょう。具体的な例を後述します。

「経費」として算入できる項目とできない接待交際費の項目

接待交際費の要件や具体的な項目を紹介します。 

接待交際費の可否と要件 

支出を接待交際費として処理するためには、次の要件を満たす必要があります。 

  • 支出の相手先が事業の関係者であること 

  • 支出の形態が接待、供応、慰安、贈答などの行為に該当すること 

  • 支出の目的が事業関係者との親睦を深めて円滑な取引関係を図ること 

この要件に該当しない支出は、接待交際費以外の項目で処理しなければなりません。 

接待交際費に該当する項目 

接待交際費の具体的な例を紹介します。 

  • 事業に関係のある人との会食費用 

・ただし、1人あたりの金額は10,000円超 

・また、サービス料、テーブルチャージ料、場所代、お土産代を含む 

  • 事業に関係のある人へのお中元やお歳暮 

  • 事業に関係のある人へのパーティーやイベントへの招待 

参考記事:飲食費精算とは?その対象や処理方法、電子帳簿保存法対応について 

接待交際費に該当しない項目 

次の項目は、接待交際費に当たりません。一般的には括弧内の費用で計上します。 

  • 従業員のためのイベント費用(福利厚生費) 

  • 事業に関係のある人との会食費用(会議費) 

・ただし、1人あたりの金額は10,000円以下 

・会食の年月日、人数、メンバー、場所などを記録した明細書を用意しておく 

  • 会議に関連する弁当・飲み物・菓子等の飲食費用(会議費) 

  • ​​​自社の周年行事にて、社内向けに購入した記念品費用(福利厚生費) 

・ただし、取引先や仕入先向けに購入する場合は交際費 

  • カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなどノベルティグッズの制作・贈与にかかる費用(広告宣伝費) 

  • 取材にかかる費用(取材費・会議費) 

  • 事業に関係のない人物との会食(経費として計上できない)

関連記事: 

会議費精算とは?その対象や処理方法、電子帳簿保存法対応について 

得意先への手土産である自社カレンダー。これって交際費?- 経費に関する意外と知らないFAQ 

​類似の勘定科目 

接待交際費には、似た勘定科目がいくつかあります。経費計上の際には注意が必要です。 

  • ​​接待飲食費 

接待交際費の一部で、得意先や仕入先の接待にかかる飲食費用を指します。 

  • 会議費 

・社内外で行われる会議、商談、打ち合わせなどの費用 

  • 福利厚生費 

従業員全員のための飲食、イベントなどに支出する費用を指します。全額、経費計上可能です。 

ただし、従業員全員を対象としない場合は「社内交際費」となり、経費計上はできません。 

具体的な計上仕訳 

  • 取引先A社に8,000円のお中元を贈る場合 
取引先A社に8,000円のお中元を贈る場合の計上仕訳

 

  • 取引先B社との会食費用(1人当たり10,000円、4名分)を計上する場合 

取引先B社との会食費用の計上仕訳

 

  • 取引先C社の社長の家族の葬儀に香典を出す場合 
取引先C社の社長の家族の葬儀に香典を出す場合

 

接待交際費の税務会計上の取り扱い 

税務会計の接待交際費(交際費等)は、原則として全額が損金不算入です。 

ただし損金不算入額の計算には一定の措置が設けられているため、結果として交際費等の一部、もしくは全部を経費計上することができます。 

損金算入限度額、損金計上における取り扱い 

損金不算入額の計算には、法人の区分ごとに下記の一定の措置が設けられています。 

■期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人 

「期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人」の場合は、損金不算入額は、次のいずれかの金額となります。 

  1. 交際費等のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用(その法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。以下「接待飲食費」といいます)の50%に相当する金額を超える部分の金額 

  1. 800万円に該当事業年度の月数(基本は12ヵ月。事業年度が12ヵ月に満たない場合はその月数)を乗じ、これを12で除して計算した金額を超える部分の金額 

つまり、1は交際費等のうち、接待飲食費の50%に相当する金額については経費計上ができますが、50%を超える金額については経費として計上できないということです。 

2は、1年間で800万円までは経費計上できますが、800万円を超える金額については経費計上ができないということを意味しています。​​なお、2の金額に達するまでの金額を「定額控除限度額」といいます。 

企業側はこのどちらを自社に適用するかを選択できるわけです。いくつか具体的な例を見てみましょう。 

  • 接待飲食費が1,000万円の場合 
    1の場合:500万円を経費計上できる 
    2の場合:800万円を経費計上できる 

  • 接待飲食費が1,600万円の場合 
    1の場合も2の場合も800万円を経費計上できる 

  • 接待飲食費が2,000万円の場合 
    1の場合:1,000万円を経費計上できる 
    2の場合:800万円を経費計上できる 

上記の例を見るとわかる通り、資本金が1億円以下の会社は、接待飲食費の金額が1年間で1,600万円を超える場合は、1を選択する方が経費を多く計上できるため有利になります。逆に、接待飲食費の金額が1年間で1,600万円未満の場合、2を選択する方が有利です。 

※資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人の100%子法人等も、この方法で損益不算入額を計算します。 

 

接待飲食費を経費として計上するには年月日、人数、年月日、人数等を記載した明細書が必須です。また、これらのルールを順守することは当然ですが、その場合でも接待交際費の計上が「過剰」と判断されると脱税とみなされる可能性があります。そのような背景のなかで近年はコンプライアンス意識が高まっており、接待交際費の支出額は減少傾向です。さらに透明性を高めるためには、社内規定を作成して社内に浸透させることも求められます。 

令和6年(2024年)の「接待飲食費」の改正 

令和6年度の税制改正により、次のような点が変更されました。 

  • 上限金額の緩和 

令和6年4月1日より、接待飲食費の判断基準の上限(1回1人あたり)が 5,000円から10,000円に引上げられました。10,000円以下であれば、飲食交際費を会議費として経費計上可能です。 

  • 特例措置の延長 

資本金の額が1億以下の中小企業では、交際費は年に800万円までは全額損金算入可能される特例措置が3年延長されて、2027年3月末まで適用されることになりました。 

出典:財務省|令和6年度税制改正の大綱 

【具体例】この支出は「交際費等」にできる?できない? 

最後にどのような支出が、「交際費等」に該当するのかを具体的な例を挙げながらチェックしていきましょう。 

  1. 取引先の社長ほか3名と自社の社員2名の合計5名で寿司屋に行って食事。支払った費用は全部で60,000円だった。 
    ⇒1人当たりの費用は12,000円となり「10,000円超」に該当するため、全額交際費等に該当します。 

  1. 取引先の社員と2名でランチに行き、1名6,000円程度の飲食をした 
    ⇒この費用は1人当たり10,000円以下の飲食費であることについて所定の事項を記載した明細書を保存している場合、交際費等には該当しません。接待飲食費に該当し、交際費等にも該当します。 

  1. 取引先の部長を自社に呼び、自社の社員5名と共に昼食を取りながらの商談を行った。支払った費用は全部で7,500円だった 
    ⇒この費用は実際に商談を行っており、会議に関連する費用になるため、全額会議費になります。したがって交際費等には該当しません。 

  1. 自社の役員3名と従業員10名の合計13名で焼肉屋へ行き、飲食をした。支払った費用は全部で10万円だった 
    ⇒この費用は自社の役員と従業員のみで飲食を行っているため、社内飲食費になり、接待飲食費には該当せず、接待飲食費以外の交際費等に該当します。交際費等の支出の相手側には社外の取引先だけでなく、自社の役員や従業員も含みます。 

  1. 取引先の社長のお祝いのため、取引先の社長1名と自社の社長以下従業員10名の合計11名で日本料理店へ行った。支払った費用は全部で90,000円だった 
    ⇒この費用は1人当たり10,000円以下に該当するため、接待飲食費に該当し、交際費等にも該当します。 

  1. 自社の社員が取引先の社員2人を会食の会場までタクシーで送迎した 
    ⇒取引先を接待目的の会場まで送迎しているので、接待交際費に該当します。 

  1. 取引先との会食が一次会だけで終わらず、別な店に移動して二次会を行った。一次会の費用は1人あたり9,000円、二次会の費用は1人あたり5,000円だった 
    ⇒​接待飲食費の上限は店ごとに計算します。一次会、二次会ともに1人当たり10,000円以下に該当するため、接待飲食費に該当し、交際費等にも該当します。 

  1. ​​一次会の会食中に取引先2人が帰宅し、同じ店で自社の社員2人だけが二次会として飲食を続けた。総額は60,000円だった 
    ⇒同じ店で飲食を続けた場合、総額で計算します。1人あたり15000円となり「10,000円超」に該当するため、全額交際費等に該当します。 

接待交際費の処理はシステム導入で効率化しよう 

接待交際費には似た勘定科目が多く、接待に関わる費用でも内容によっては接待交際費として計上しないものもあるため、処理が煩雑になります。そのため、ミスも発生しやすいものです。 

また税務調査が入った場合には、それぞれの処理について細かく説明する必要があるかもしれません。 

接待交際費、接待飲食費、会議費などの経理処理や損金算入の処理は混同しやすく、ミスが発生しがちです。各費目の定義と適用基準を明確にし、把握することが重要です。これらの業務を効率化するためには、適切な経費精算システムを導入するのも有効です。 

なかでもConcur Expenseはインボイス制度やペーパーレス化に対応し、電子決済やコーポレートカードなどさまざまなサービスや会計システムと連係しており、手間を最小限にして正確な処理が可能です。 

またクラウドサービスのため、インボイス制度や電子帳簿保存法など税制改正にも対応しています。 

さらに、導入後のサポートも充実しているため、安心してご利用いただけるでしょう。 

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