電子帳簿保存法・インボイス制度
一般的な請求書電子化の事務処理フロー~電子帳簿保存法はこう活用する!請求書電子化ガイド解説 第2回(前編)~
第1回は、国税関係書類の電子化の中で、領収書と請求書の電子化において想定される違いについて説明いたしました。
第2回、第3回においては、それらの違いについても織り交ぜつつ、想定される一般的な請求書電子化の事務処理フローについて、Concur Invoiceを利用したケースも交えて説明します。
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請求書電子化の作業ステップ
一般的な事務処理フロー内の作業ステップとしては、以下のものが想定されます。
ステップ1 請求書を受領する
ステップ2 請求書を電子化する
ステップ3 請求書処理を上長に申請する
ステップ4 上長・経理担当者等において承認する
ステップ5 紙の請求書を回収する
ステップ6 定期検査の後、紙の請求書を廃棄する
今回は、ステップ1~3について説明します。
ステップ1 請求書を受領する
請求書の受領方法はいくつかあります。
電子請求書(PDFファイルや請求システムを通して)で受領した場合は、領収書と同様、基本的にはスキャナ保存(電子帳簿保存法第4条)の対象ではありません。
電子請求書については、第4回で改めて説明しますので、ここでは説明を割愛します。
本項では、
A) 請求書の紙の原本を、郵送等で受領する
B) FAXにて一度受領し、後日原本を郵送・宅配便で受領する
の2つについて、想定される対応方法について説明します。
A) 請求書の紙の原本を、郵送等で受領する
請求書の原本そのものを、郵送等で受領した場合は、領収書の際と同様、電子化のフローを開始します。
第1回でも説明したように、請求書を、請求書発行者から対面で受領しないケースも多くあります。前回の引用(対面で授受が行われない場合における国税関係書類の受領をする者の取扱い)及びその解説を見ると、郵送された請求書が郵便受け等に投函された時点で「受領した」とみなされ、明確な「受領をする者」がいないこととなっています。
加えて、その後社内で請求書を処理する担当者の手元に渡った際、その担当者が電子化を行って構わないとされています。
すでに社内において、部署単位(部署ごとのアシスタントや庶務担当など)、もしくは会社単位(経理担当)で請求書を処理する担当者を定めている場合は、その担当者が、請求書電子化の「起点」となります。
B) FAXにて一度受領し、後日原本を郵送等で受領する
FAXで受領し、別途紙の原本を受領するような、よくあるパターンの際は注意が必要です。
FAXサーバを通して画像ファイル受領し、紙の出力がない場合は、前述の「電子請求書」として扱われるためよいのですが、通常のFAXを通して紙で出力されたものを受領し、それとは別に紙の原本を郵送等にて入手する場合は、その両方を電子化して保存する必要があります。
電子化の要件に「バージョン管理」がありますが、紙の請求書を2通受領した場合、その要件に基づき、2通とも電子化を行った上で管理する必要があるようです。
その際の電子化の方法は、次項にて説明しますが、同じ内容の請求書だとしても、紙を2度受け取ることになるため、請求書の電子化を行う際は手間が増えることになります。
請求書の電子化の導入を契機に、このような運用を見直す必要も出てくるかもしれません。
例えば、
・FAXで事前に受け取ることをやめ、郵送される原本のみで請求書処理を行う
・逆にFAXでのみ受け取り、原本を郵送してもらうことを止める
・請求書の発行元に、FAXではなくPDFファイルで送信してもらうよう依頼する
などが考えられます。
「郵送してもらうと、請求書の締め日に間に合わなくなるので、取り急ぎFAXで送信してもらっている」や、「押印された原本がなければ、社内での決裁が下りない」という事情もあると思いますが、電子化導入後、最終的には紙の請求書を廃棄することを考えると、「紙を2度受け取る」というこれまでの運用を見直す、ちょうど良い機会なのかもしれません。
ステップ2 請求書を電子化する
紙で受領した場合は、請求書を電子化します。
ここで領収書の際と異なるのは、電子化を行う担当者、及び入力者が誰になるのか?になります。
まず電子化を行う担当者ですが、領収書の場合、Concur Expenseのお客様では、「特に速やかに方式」に従い、主にスマートフォンを用いて、受領した本人が3日以内に(3日を過ぎた場合でも新通達に則って)実施することを前提にされているケースが非常に多く見られます。
受領した本人以外の人が電子化を行うケースとしては、「業務処理サイクル方式」に従い、社長などの会社の幹部の方の領収書を、秘書の方が37日以内に代理で電子化する、などの場合が見られます。
この場合の「入力者」は、受領した本人が3日以内に電子化した場合はその本人、3日を過ぎたもの場合は、代理で電子化した人や、紙の領収書と画像を確認した人が該当します。
一方、請求書の場合はどうなるでしょうか。
請求書が会社の郵便受等に投函され、社内で請求書をまとめて処理している担当者が電子化を行うケースを想定してみます。
請求書が郵便受等に投函され場合は、明確な「受領をする者」がいないことになるため、受領した者が受領日翌日から3日以内に電子化を行うこととしている「特に速やかに方式」の考え方を適用するのが、いささか難しくなります。
さらに、投函されてから実際に電子化を行う人の手元に届くまでに、3日間が過ぎてしまうことも考えられるため、「特に速やかに方式」を適用すると、かえって厳しい運用を迫られることになります。
そのため請求書の電子化の際は、初めから「業務処理サイクル方式」を用いて、受領日翌日から37日以内に電子化を行うことを前提とした方が、事務処理フローを考えやすくなります。
この場合の入力者は、電子化を行う担当者になります。そのため、社内で請求書をまとめて処理している担当者がいる場合、その方を「電子化を行う担当者」として事務処理フローを考えると、導入がスムーズに進むと考えられます。
一方、前項で説明した「FAXで一度受領し、その後郵送してもらう」ケースの場合、それぞれの請求書を別々にスキャンするよりも、2通の請求書が揃った時点で、スキャナにて1つのPDFファイルとしてスキャンするほうが手軽であると考えます。
その場合は、郵送してもらうものが届くのを待ってから電子化を行うことなりますので、その意味からも「業務処理サイクル方式」を前提に、事務処理フローを考えた方がよさそうです。
実は、Concur Invoiceにおいては、「業務処理サイクル方式」を前提にした方が良い理由がもう一つありますが、これは次項にて説明します。
ステップ3 請求書処理を上長に申請する
請求書をスキャンし、Concur Invoiceにアップロードを行い、必要な項目等を入力し、上長に申請を行います。
Concur Invoiceにおけるタイムスタンプの付与は、請求書の必要項目を入力する際に、「タイムスタンプ」ボタンをクリックすることで、付与されます。その後、上長に請求書を申請しますが、その際、タイムスタンプが画像に正しく付与されていないければ、上長に申請できないようになっています。ここが、Concur Expenseとの大きな違いです。
Concur Expenseでは、領収書を撮影・スキャンし、アップロードした時点でタイムスタンプが付与されます。ご存知の通り、「電子化」はタイムスタンプを付与した時点で完了とされています。そのため領収書の場合は、アップロードし、タイムスタンプが付与されたことを確認した時点で、電子化が完了します。
実際にConcur Expenseでは、「領収書を受領」→「自筆で署名の上、スマートフォンで撮影」→「内容を確認し、画像をアップロード」→「タイムスタンプを付与」という一連の作業は、1分もあれば完了します。ですので、「3日以内」の要件にも適合しやすいです。
しかしConcur Invoiceの仕様では、請求書の画像をアップロードした時点ではタイムスタンプは付与されず、請求書申請に関係する様々な情報(支払先情報や請求書明細など)を入力する際に、タイムスタンプを付与します。
これらの点から見ても、やはり「受領日翌日から3日以内」の要件を満たすのは難しく、「37日以内」を前提とした「業務処理サイクル方式」が適していると考えます。
Concur Invoiceにおけるタイムスタンプの付与についての詳細は、第5回で予定している、Concur Invoiceの誌上デモにて、改めて説明いたします。
次回は、残る3つのステップについて説明します。
電子帳簿保存法はこう活用する!請求書電子化ガイド(リンク集)
第1回「請求書と領収書の電子化の違い」
第2回「一般的な請求書電子化の事務処理フロー(前編)」
第3回「一般的な請求書電子化の事務処理フロー(後編)」
第4回「請求書を電子化するためのデバイス・電子請求書について」
第5回「Concur Invoiceでの請求書電子化フロー」(coming soon)