経理・総務の豆知識

インフルエンザの予防接種などの医療費は経費にできる?仕訳例や勘定科目を解説

SAP Concur Japan |

医療費は経費としては原則認められませんが、例外的に認められるケースがあります。どのような場合に認められるのかを理解し、勘定科目では何を使用するべきなのかを確認しておきましょう。本記事では、医療費の経費計上について、具体的なケースや仕訳例、注意点を詳しく解説します。

医療費は経費にできる?

医療費を経費として計上できるかどうかは、その支出の目的や性質によって判断されます。

個人的な治療や健康維持のための医療費や病院代などは、原則として経費にはなりません。ただし、一般的に、従業員の福利厚生や業務上の必要性から発生した医療費は、経費として認められる可能性が高いです。

医療費控除との違い

よく経費と混同されがちな単語として「医療費控除」が挙げられます。医療費控除とは従業員個人が1年間で支払った医療費が基準を超えるとき、その超過分の医療費が所得から控除され、税金の一部が還付される制度です。

このように医療費控除では個人の医療費などに対する支出を対象とし、経費は会社の事業関連の支出を対象とするため目的が異なります。必ず理解しておきましょう。

経費として認められる医療費

経費として認められる可能性が高い医療費は以下の3つです。

  • インフルエンザの予防接種
  • 人間ドック
  • 健康診断

インフルエンザの予防接種

インフルエンザの予防接種は、医療費として認められており、多くの企業で予防接種代の全額負担か一部補助を行っています。

ただ、インフルエンザの予防接種を医療費として認めるには以下のような条件があります。

  • 業務上必要であること

経費として認められる前提としては、業務に関連していることが重要です。インフルエンザは感染リスクがあるため、業務上必要な場合は医療費として認められるでしょう。

  • 全従業員を対象としていること

全従業員を対象としている場合、経費として認められます。一方で一部の従業員のみや事業主だけの場合は経費として認められるのが難しいでしょう。

  • 適切な相場であること

世間一般で行う予防接種よりも不当に高い費用の場合は経費として認められないでしょう。適切な範囲の相場の金額で経費計上しましょう。

上記3つの条件を満たしていれば、インフルエンザ予防接種費用は「福利厚生費」として経費計上できます。条件について不明の場合は専門家に相談しましょう。

人間ドックと健康診断

従業員が受ける人間ドックや健康診断の費用は、業務上必要なため経費として認められます。健康診断は労働安全衛生法により事業主に実施が義務付けられており、その費用は全額会社負担のため経費として計上できます。

また、法定項目以外の受診が必須でない人間ドックについても、企業の福利厚生制度として実施する場合は経費処理が可能です。ただし、個人的な判断で受診する人間ドックは、経費として認められないため注意が必要です。

経費として認められない医療費

経費として認められない医療費について解説します。

個人や家族の一般的な医療費

先述したように個人や家族の医療費については、経費として認められません。例えば、頭痛、風邪やインフルエンザなど一般的な病気の治療費などです。個人で支払うものになります。

経費計上における個人事業主と法人の違い

医療費は個人事業主や法人によっても経費にできるか分けられます。

個人事業主

個人の医療費も経費として認められませんが、事業に関連する医療費(健康診断など)は経費となる場合があります。ただしどこまでが事業に関連するのかについては専門家と相談が必要です。

法人

先述したように従業員の福利厚生や業務上必要な場合に発生した医療費は経費にできます。

  • 従業員の定期健康診断費用
  • 業務上の怪我や病気の治療費
  • 感染症予防のためのワクチン接種費用
  • 従業員の福利厚生としての人間ドック

これらのケースでは、会社が従業員の健康管理や安全衛生のために支出した費用として、経費計上が可能です。また、市販薬の購入費用も条件を満たすことで、税制上の優遇措置を受けることができます。

医療費の経費勘定科目や仕訳例

医療費を経費として計上する際は、勘定科目を「福利厚生費」とします。福利厚生費は、従業員の健康管理や福利厚生に関する費用を計上する勘定科目です。また、従業員が何らかの原因で清算出来なかった場合は一旦会社が立て替える必要があります。この場合は「立替金」として処理し、返金があれば振り替え仕訳を行いましょう。実際に仕訳例を見てみましょう。

福利厚生費

福利厚生費での仕訳例は以下の通りです。
従業員のインフルエンザ予防接種代10,000円を会社が負担する場合
福利厚生費

立替金

立替金の仕訳例は以下の通りです。
従業員の健康診断代3,000円を会社が負担する場合
立替金

経費計上の際に必要な項目について詳しくは「経費の項目とは?どんなものが経費になるのかを知って正しく仕訳しよう」をご覧ください。

医療費を経費として計上する際の領収書について

企業の事業に関する費用である経費に対して、必ず領収書が必要となります。そのため医療機関より領収書を必ず受け取るようにしましょう。

また、経費だけでなく医療費控除の際も同様です。
この医療費控除を受ける際には明細書が必要となります。従来領収書が必要となっていましたが、2017年より医療費控除の明細書が代わりに必要となりました。明細書についてはこちらの国税庁のページからダウンロードできます。

領収書の保管期間や保存方法

医療費の領収書や明細書など、関連書類の保管は、税務上非常に重要です。経費に使用する領収書については7年間保存が基本となります。

また、医療費控除を受ける際の領収書については添付または提示は必要ありませんが、5年間自宅で保存する必要があります。詳しくは、こちらの税務署からのお知らせをご覧ください。

保存方法としては、以下のような点を意識しておくとよいでしょう。

  • 病院にかかった人・月ごとにまとめる
  • 医療機関ごとにまとめる
  • スキャニングを行い、電子化する

医療費の経費について注意ポイント

医療費を経費として計上する際は、以下の点に特に注意が必要です。

経費計上の条件を満たしていることを税務署に説明できること

医療費を経費として計上する際は、さまざまな条件を満たす必要があります。例えば、業務に関連した医療費なのか、全従業員を対象としているのかなどの確認が必要です。

もし経費として認められるか不明な場合は、専門家に相談してみましょう。必要に応じて税理士や所轄の税務署に確認することをおすすめします。

領収書や明細書などを適切に保管していること

医療費を経費として認められるには領収書や明細書などの重要な書類を適切に保管する必要があります。適切に保管していないと正しく診療していないと捉えられてしまうため、控除や経費として認められないことも考えられます。

そのため医療費関連の書類は必ず適切に保管しましょう。

海外出張中の社員の医療費の扱いについて

海外出張中の社員が病院代や治療費を使用した場合も経費として認められるでしょうか。

原則、海外出張中であっても個人の医療費は経費として認められません。高額な医療費となってしまいがちですが、個人の支出であれば経費として認められません。

一方で国内と同様に、予防接種や業務上必要な場合に利用した医療費であれば認められるため、海外出張中の社員への医療費について周知の徹底と各種保険を利用することをおすすめします。

医療費の経費計上はシステム導入で効率化

医療費を経費として計上する際には、上述したように領収書や明細書などの証明書類の適切な保管が必須です。これらの書類を従来の紙ベースで管理していると、書類の紛失や検索に時間がかかってしまいます。

そこでシステムを導入することで、必要な書類のスキャンデータを瞬時に保存でき、キーワードで素早く検索することが可能になります。さらに、データの一元管理により経費精算作業の効率化が実現し、経理担当者の業務負担も大幅に軽減されます。そのため、医療費の経費計上にはシステム導入が欠かせません。この機会に、ぜひ一度導入をご検討されてみてはいかがでしょうか。

経費システムについて詳しくは「経費精算システムは中小企業の経理課題を解決する?導入のポイントとは?」をご覧ください。

経費として認められる条件をしっかり確認しよう

医療費の経費計上は、従業員の健康管理と企業の財務管理を両立させる上で非常に重要です。経費として認められるケースとしては、インフルエンザなどの予防接種や人間ドック、健康診断が挙げられます。これらの勘定科目としては「福利厚生費」を使用します。

ただし、医療費を経費として計上するには、領収書や明細書などの重要な書類の適切な保管が不可欠です。
コンカーの経費精算システム「Concur Expence」では領収書の電子化を行い、適切に保管できます。また、いつどこにいても経費精算業務を行うことが可能となり、経理業務の業務効率化やDXに貢献します。

ご興味ある方は、ぜひ一度この機会にご相談ください。

経理・総務の豆知識
CIAの書庫にシンプルサボタージュフィールドマニュアルという公式文書が保管してあるのをご存じでしょうかこれは第二次世界大戦中に作成した米国の諜報員向けのマニュアルです このマニュアルの指...
もっと見る
経理・総務の豆知識
アイデアの多様性価値の多様性働き方の多様性などさまざまなシーンで語られる多様性という言葉しかし結局のところ多様性とは何を指しているのでしょうかこの記事ではビジネスにおける多様性をあら...
もっと見る
経理・総務の豆知識
チームワークを築くうえで大切な信頼関係信頼できる人がいる職場とそうでない職場は社員の満足度が異なるだけでなくチームの生産性にも影響を与えます今回は信頼される人の特徴や信頼関係に役立つ...
もっと見る