経理・総務の豆知識
交通費精算のポイント、通勤費との違いや計算方法について解説
経理担当者にとって、経費の精算は重要な業務のひとつですが、なかでも交通費の精算は頻度が高く、手間のかかる業務といえます。新型コロナウイルスの感染拡大により、業務で電車やバスを利用する機会は減っているかもしれません。しかし、テレワークが増えたことで、定期券ではなく実費支給が増え、かえって経理業務の負担が大きくなっているケースも少なくないのではないでしょうか。そのような事態に対応するために、あらためて交通費精算における旅費交通費と通勤費の違い、交通費の計算方法などを紹介します。交通費精算業務の効率化を検討している経理部門の責任者はぜひご一読ください。
交通費と旅費交通費、通勤費の違い
電車やバス、タクシー、飛行機などを利用した際にかかる経費には、交通費や旅費交通費、通勤費などがあります。どれも移動をするための費用ですが、名称が違います。それぞれどのような意味合いを持つのでしょうか。
交通費とは
勤務地を起点に移動した際にかかる費用です。例えば、勤務地から取引先へ商談に出かけた際の往復電車代や、勤務地から自社が参加している展示会の会場へ移動した際のタクシー代などが相当します。なお、勤務地以外を起点とするケースでも、近隣への異動であれば交通費とするのが一般的です。取引先から取引先への移動や、テレワーク中に自宅から取引先への移動する際の費用が該当します。さらに、社用車で移動した場合のガソリン代や、コインパーキングを利用した際の駐車場代も含まれます。
旅費交通費とは
本勤務地以外を起点に移動や宿泊をした際にかかる費用です。たとえば、東京本社に勤務する従業員が、北海道の取引先と商談を行う際にかかる飛行機代と宿泊費や、海外の工場へ技術指導を行うために出張する際にかかる飛行機代や宿泊費が相当します。
なお、旅費交通費は「出張旅費」、海外渡航のための「海外旅費」、転勤のための「赴任旅費」のなどに大きく分けられます。また、従業員に支払われる日当も旅費交通費に含まれます。
※旅費精算について詳しくは、「旅費精算の煩雑さを軽減し、効率的な精算業務を行うためのポイントを解説」をご覧ください。
通勤費とは
通勤にかかる「通勤費」も「交通費」に該当すると感じられるかもしれません。しかし、通勤費は通勤手当とも呼ばれ、従業員に対する給与の一部と位置づけられます。つまり、交通費と通勤費は同じ移動にかかるお金ですが、費用の性質は異なります。
※さまざまな経費の項目について詳しくは、「経費の項目とは?どんなものが経費になるのかを知って正しく仕訳しよう」をご覧ください。
通勤費の勘定科目、非課税限度額、計算方法は?
通勤費の詳細を見ていきます。
通勤費の勘定科目
通勤費の勘定科目は、給与手当もしくは旅費交通費として処理することも可能です。給与所得の一部となるため、給与手当とするのが自然に感じられるかもしれません。しかし、通勤費は限度額を超えた部分は課税の対象になります。
通勤費の非課税限度額と計算方法
通勤費は原則として非課税所得ですが、1カ月の支給が限度額を超えた部分に関しては給与手当として、源泉徴収の対象となります。
通勤費の非課税限度額は、利用する乗り物によって異なります。たとえば、電車やバスなどの公共交通機関の場合の上限額は15万円です。
なお、電車やバスを利用する場合に支払われる通勤費は、「通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、もっとも経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合」と定められています。
電車やバス通勤の従業員へ支払う通勤費は1カ月の定期代を基本として算出します。社員は半年単位、アルバイトは1カ月単位で支払うのが一般的ですが、支払い方に決まりはありません。また、自家用車や自転車で通勤する場合の非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)によって決まります。具体的には次のとおりです。
片道の通勤距離 |
1カ月当たりの限度額 |
---|---|
2キロメートル未満 |
全額課税 |
2キロメートル 以上10キロメートル 未満 |
4,200円 |
10キロメートル 以上15キロメートル 未満 |
7,100円 |
15キロメートル 以上25キロメートル 未満 |
12,900円 |
25キロメートル 以上35キロメートル 未満 |
18,700円 |
35キロメートル 以上45キロメートル 未満 |
24,400円 |
45キロメートル 以上55キロメートル 未満 |
28,000円 |
55キロメートル 以上 |
31,600円 |
電車やバスと同様、この金額を超える部分の金額は給与手当として源泉徴収の対象となります。
自家用車やバイクで通勤する従業員に支払われる通勤費は、次の計算式で算出するのが一般的です。
- (自宅から勤務先までの往復距離×1カ月の平均労働日数×ガソリン単価)÷平均燃費
実際のガソリン代は月によって上下するうえ、利用する車、バイクによって平均燃費も大きく異なるため、経理担当者にとってはかなりの手間がかかります。そのため、従業員側がある程度、有利になるような算出方式に設定して、負担を削減することが可能です。
なお、交通費や旅費交通費は、課税対象ではありません。従業員側が立て替えた場合は、基本的に都度、かかった費用をまとめて精算を行います。
※経理担当者の負担をさらに増やす要因ともなる交通費、通勤費の不正受給については、「交通費の不正受給を防ぐには? 会社側が考えるべき手段を解説」をご覧ください。
テレワーク定着により非効率化が進む通勤費の実費支給
通勤費の支給について、テレワークの定着による影響を踏まえて紹介します。
通勤費、実費支給の問題点
新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークを導入する企業が一気に増加しました。現在では、テレワークを中心にしつつ、週に1~2日だけオフィスに出社するハイブリッドワークに移行する企業も多いようです。ここで問題となるのが、通勤費です。
週に1~2日しか出社しない社員に対し、通勤定期代を支給するのは無駄なコストと考え、安易に実費支給にすると、かえって費用が高くついてしまう場合があります。3カ月、6カ月定期の割引率を計算に含めると、実費支給のほうが高くなるケースもありえるからです。
経理担当者にとって通勤費にかかわる業務は、これまで以上に手間がかかり、負担が増えるでしょう。それを回避するためにも、通勤費の実費支給をする基準や実費支給のフローをしっかりと規程しておくことが望ましいです。
実費支給の対応が必要とされる理由
なかには、テレワークはコロナ禍に対応するための一時的な措置であり、基準や規定づくりは不要だと感じる企業もあるかもしれません。しかし、内閣府による、テレワークの現状を調査した資料によると、2021年3月15日から26日の間の出社状況は次の結果となりました。
国家公務員の出社状況(非管理職の職員)
- 週4~5回出社 13.9%
- 週1回、もしくは週2~3回出社 65.9%
- 月2~3回、もしくは月1回出社 13%
※自衛官等を除く国家公務員へのアンケート調査
参考 テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会|内閣官房内閣人事部
週1~3回出社する層が最多ではありますが、それ以外の層も10%超と一定の存在感を示しています。職種や業務、もしくは時期によって、テレワークと出社の比率が変わってくることも考えられます。例えば、月初の出社率は低くても、月末は業務が増えて週のほとんどで出社する、といったケースもありえるでしょう。
また同資料では、テレワーク下のマネジメント改革の必要性も説いており、国がテレワーク推進を働き方改革の一環として捉えていることが見てとれます。つまり、テレワークは今後も継続が見込まれ、かつテレワークの頻度は状況に応じて変わる可能性が高いといえます。
企業では、テレワーク定着を前提として交通費の実費支給の制度化を進め、経理担当者の負担を軽減することが不可欠でしょう。
交通費や通勤費の支払い義務について
経理担当者の負担を増大させている交通費や通勤費の精算業務。では、交通費や通勤費の支払いを一切しないことは可能なのでしょうか。実は、交通費も通勤費も法律上、支払い義務はありません。
もちろん、ほとんどの企業では交通費も通勤費も支払っていますが、通勤費に関しては、非課税限度額以上は支払わないケースも少なくありません。
また、社員には通勤費の全額を支払うが、アルバイトには月額や日額で支払い上限額を決めているケースも多いでしょう。交通費や通勤費の支払いは企業側が自由に決められるため、経理部門としては、できるだけ業務負担を増やさないかたちで条件を決めることが重要です。
交通費精算業務を効率化させるためのポイント
手間のかかる交通費精算業務を効率化させるポイントは、経費精算システムの活用です。もちろん、現在でもシステムを活用している企業は少なくないでしょう。しかし、システムにもさまざまなタイプがあります。例えば「基本は紙の領収書や交通費の請求書を使って管理し、最終的な集計だけをシステムに任せる」ような方法では、効率化は進みません。
システムを活用して交通費精算業務の効率化を進める際は、前提としてペーパーレス化を実現しておくことがポイントです。そのうえで、システムには、交通系ICカードや法人カードの利用明細の自動取り込みや、キャッシュレス精算ができる機能が求められます。ペーパーレス、キャッシュレス、入力レスが伴って初めてシステム活用による効率化が実現可能なのです。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で一気に導入企業が増加したテレワークは、すでに柔軟な働き方のひとつとして定着しつつあります。
すでに社内規定を定めている企業も多いかもしれませんが、業務や時期によりテレワークと出社の頻度は変わると考えられるため、柔軟に対応できるルールづくりが求められます。
交通費精算業務の効率化は経費精算システムの活用がカギ
経費のなかでも、特に頻繁な精算が必要となる交通費。通勤費や旅費交通費の違いを理解し、それぞれに異なる精算をするのは非常に手間がかかり、経理担当者の負担を増大させます。
そのような場合におすすめしたいのが、「Concur Expense」の活用です。 「Concur Expense」は、ほとんどの精算業務を自動化し、経理業務の効率化を実現します。
システムを効果的に活用すれば、領収書や請求書の電子化、小口現金の廃止などを進めて、煩雑な経理業務の多くを自動化できます。経理業務の効率化が実現すれば、経理担当者は生産性の高い業務に集中できるようになるでしょう。交通費精算業務の効率化が進まないといった際は、ぜひお気軽にご相談ください。